土木工事業の事業承継事例

目次

土木工事業は、社会インフラを支える重要な業種です。多くの中小企業が地域に根ざして事業を展開していますが、経営者の高齢化や後継者不足が進み、事業承継の課題が深刻化しています。こうした背景から、M&Aによる第三者承継が注目されています。

土木工事業とは?
業種の概要

土木工事業は、道路や橋梁、上下水道、河川、港湾などのインフラ整備を担う建設業の一分野で、主に公共工事を請け負います
地域の安全や暮らしを支える社会的役割が大きく、特に災害復旧や防災関連の工事では継続的な需要があります。

土木工事業における
事業承継の現状と動向

土木工事業界では、経営者の高齢化が進み、親族内承継が難しいケースが増加しています。

その一方で、公共工事の安定性や地域基盤を評価し、業界外から参入を希望する企業も

こうした背景から、M&Aによる事業承継が注目されており、特に技術力や地場ネットワークを評価した譲受事例が増加しています。

加えて、建設業許可や入札資格の引継ぎが可能な点も、M&Aを選ぶ後押しとなっています。

土木工事業でM&A・事業承継が選ばれる3つのメリット

土木工事業におけるM&Aは、単なるリタイアの手段ではありません。大手の資本力やネットワークを自社の地場基盤と掛け合わせることで、独立経営では成し得なかった飛躍的な成長を実現する「戦略的選択」としての側面が強まっています。

1. 「格付け」の維持・向上による受注力の強化

公共工事を主軸とする土木業において、自治体からの格付け(入札参加資格ランクは事業の生命線です。中堅・大手のグループに加わることで、経営事項審査(経審)における経営状況評点(Y点)の改善や、譲受側が持つ高い完成工事高実績とのシナジーが期待できます。

従来は指名対象外だった大型案件や高単価案件への入札が可能となり、収益構造の安定化と事業規模の拡大を同時に達成することが可能です。

2. ICT施工・DX対応の加速と若手採用力の向上

国土交通省が推進するi-Construction(ICT施工)への対応には、3次元測量機器やICT建機の導入など、多額の設備投資が必要です。M&Aによって買い手側の豊富な資金力を活用できれば、これらの最新設備の導入を大幅に早めることが可能になります。

最先端のICT技術が整うことは、将来性に敏感な若手人材にとって大きな魅力となり、業界全体の課題である「若手入職者不足」を解消し、次世代の現場責任者を育成する強力なインセンティブとなります。

3. 資材調達コストの削減と収益性の改善

燃料費や生コン、アスファルト合材といった主要資材の価格が高騰するなか、単独経営では価格交渉力に限界があります。グループ化によってバイイングパワー(共同購買力)を発揮することで、仕入れルートの最適化とコスト抑制が可能になります。

現場の経費率を下げ、粗利益を底上げできる点は、競争が激化する土木業界において、持続可能な経営基盤を築くための極めて現実的なメリットといえます。

土木工事業の事業承継事例

ここでは、実際にM&Aによる事業承継を実行した土木工事会社の事例を紹介します。どのような背景や課題があり、どのように承継が行われたのかを確認していきましょう。

【成功事例①:
山木工業ホールディングスのケース】

概要 福島県やいわき市での工事実績活用を目的としたM&A
課題 東北地域の事業基盤強化・新領域である港湾関連事業への進出を模索
対応策 オリエンタル白石が株式取得し、東北地域での連携体制を構築

結果

今回のM&Aを通じて、山木工業ホールディングスは、これまでの地域で築いた事業基盤を崩すことなく、オリエンタル白石の営業ネットワーク技術リソースを取り込む形で体制を強化しました。

橋梁工事や港湾インフラといった分野では、グループとしての提案力が増し、新たな受注のチャンスも広がっています。

従業員の雇用も変わらず守られ、地元との信頼関係も維持されたまま、これまで以上に安定感のある運営が実現されています。

参照元:M&A HACK「大工工事会社のM&A・事業承継の全知識!売却相場・事例・成功ポイントを徹底解説」(https://sfs-inc.jp/ma/5412/

【成功事例②:丸金建設のケース】

概要 岡山県の舗装・土木工事会社、地域密着の事業継続を目的としたM&A
課題 事業承継の検討の上、グループ連携が必要と判断
対応策 コンセックが全株式を取得し、技術交流・支援体制を整備

結果

丸金建設は、M&A後も地域密着の体制を維持しながら事業を継続し、地元の顧客や取引先との関係を変えずに長年培った信頼を引き継いでいます。

コンセックからの技術支援グループ各社との連携によって、さらに地域に根ざした事業展開が可能となり、グループ全体での技術交流や相互支援体制の充実を期待されます。

参照元:M&A HACK「土木・舗装工事業界のM&A・事業承継の事例!動向・相場・相談先も解説」(https://mastory.jp/土木・舗装工事業界のM&A

【プロの視点】土木M&Aを成功させる「実務の裏側」

事例のような円滑な承継を実現するために、水面下の交渉でプロが必ず設計する「2つの急所」を解説します。

1. 資格者の離職を防ぐ「リテンション」の設計

土木工事業では、1級土木施工管理技士などの有資格者が1人欠けるだけで、建設業許可の維持や入札参加資格に致命的な影響が出ます。

成約事例の裏側では、単なる給与条件の維持だけでなく、「大手グループの福利厚生の適用」や「ICT建機の導入による現場負担の軽減」など、技術者が「この会社に残るメリット」を感じるための具体的な条件交渉が、経営者間で丁寧に行われるのが通例です。

2. 経審(経営事項審査)スコアの戦略的シミュレーション

公共工事を主軸とする場合、譲渡後の「格付け(ランク)」がどう変わるかは死活問題です。

専門性の高い仲介会社が入る場合、成約前に必ず「譲渡後の点数合算シミュレーション」を実施します。

例えば、地域の防災実績(加点要素)を持つ譲渡企業と、高い完成工事高を持つ譲受企業が組むことで、自治体のAランクを維持しつつ、より大規模な工事への入札を可能にする「戦略的な合算」を出口として描きます。

土木工事業の承継成功のための
ポイント

土木工事業でM&Aや事業承継を成功させるには、業界特有の許可制度、公共工事の慣習、人材構造などを踏まえた戦略と準備が不可欠です。以下に、特に重視すべきポイントを整理します。

早期からの人材・技術継承計画の
重要性

土木工事業では施工管理技士や現場責任者の経験・ノウハウが品質を左右するため、M&Aを見据えた事業承継ではこれらの技術職を確実に確保できる体制構築が欠かせません。

後継者不足や高齢化が進む中で、技術の空白期間が発生するリスクを最小限に抑えるためには、引継ぎに長期的な視点を持つことが求められます。

特に土木工事業では、長年の現場経験を通じて培われた暗黙知の継承が重要であり、社内教育やOJTだけでなく、外部パートナーとの連携も視野に入れた柔軟な体制づくりが不可欠です。

企業規模に合ったM&A戦略の構築

中小の土木工事会社がM&Aを検討する際は、自社の規模や地域特性に応じた現実的な戦略設計が重要です。価格交渉力の弱さや人材確保の難しさを補う手段としてM&Aを活用するには、スモールスタートの買収や地域密着型のシナジーを重視する視点が重要です。

さらに、買収後の統合計画(PMI)を丁寧に設計し、文化やオペレーションの統合を通じて中長期的な成長を目指す姿勢が求められます。

譲受企業との相性と地域ネットワークの継続性

公共工事は地元発注が多いため、自治体や協力会社の連絡先や取引履歴を整理し、譲受企業と共有してネットワークを円滑に引き継ぐ体制を整えましょう。これにより、受注の継続や売却後の安定した取引が期待できます。

譲受候補が既存の関係性を尊重できるかは、事前の面談やヒアリングで確認し、信頼関係を維持することが安定的な受注環境の確保につながります。

また、名義変更や許可の再取得、信用維持を円滑に進めるには、必要書類や手続きスケジュールを事前にリスト化し、双方で共有しておくことが重要です。新体制でも公共入札への参加資格を維持し、事業を中断せずに継続できます。

技術職・現場責任者層との信頼関係維持

M&A後の離職リスクを避けるには、現場を支えるキーマンとの信頼構築が欠かせません。彼らの不安や疑問に丁寧に応える姿勢が、承継を成功へ導く基盤となります。

特に、安全や品質の中核を担う技術職・現場責任者が安心して働き続けられるよう、労働条件やキャリアパスを明確にし、承継スキームに組み込んでおく必要があります。

交渉段階からキーマンと対話を重ね、M&A後の役割や組織の方向性を共有しておけば、組織内の不安も抑えられ、承継後も一体感を持った運営につながります。

土木業の事例から学ぶ、失敗を避けるための事前準備

土木工事業のM&Aを成功に導くためには、目に見える資産だけでなく、技術や信用の「根拠」を客観的に証明する準備が不可欠です。成約後にトラブルを招かないための、実務的な事前手順を整理しましょう。

1. 有資格者の棚卸しと技術継承の可視化

まずは自社に在籍する1級・2級土木施工管理技士の年齢構成と、向こう数年以内の退職予定時期を正確にリスト化してください。建設業許可の維持に不可欠な「専任の技術者」が承継直後に不足する事態は、買収価格の下落や交渉決裂の最大の要因となります。

誰がどの工種の許可を支えているのかを整理し、承継後も継続勤務してもらうための処遇案をあらかじめ想定しておくことが、事業の継続性を担保する鍵となります。

2. 現場写真・管理書類の確実な証拠化

買い手企業が評価するのは、単なる売上数字ではなく過去の工事成績評定点や施工のプロセスです。工事概要書、工程表、現場写真、完成図書などの管理書類が乱雑な状態では、正当な企業価値が算出されません。

特に、地域の安全を守る災害復旧実績や難工事の完遂実績は高く評価されるポイントです。それらが正しく評価対象となるよう、管理書類を「証拠資料」として完備しておくことが、高値での成約を引き出す準備となります。

3. 行政(発注者)への事前調整と法務スケジュールの策定

M&Aの手法によっては、譲渡認可(事前認可制度)の活用や、入札参加資格の再申請が必要になります。このタイミングを誤ると、一時的な指名停止状態や資格喪失を招き、進行中の工事や次期の受注に致命的な影響を与えるリスクがあります。

指名停止を避け、公共工事の継続性を守るためには、仲介会社や行政書士と連携し、どの時点で役所への報告や調整を行うべきかという、緻密な法務スケジュールを事前に策定しておくことが重要です。

まとめ

土木工事業における事業承継は、単なる経営権の移転ではなく、地域・現場に根ざした技術と信頼の継承でもあります。

オリエンタル白石と山木工業ホールディングスのケースのように、M&Aによって事業の発展と安定を両立させることも可能です。

将来の事業継続に向けて、早期の準備と信頼できる専門家の支援が成功の鍵となります。

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引用元:M&Aフォース(https://www.ma-force.co.jp/)
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引用元:日本M&Aセンター(https://www.nihon-ma.co.jp/)
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料金
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承継先を自分で
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しんきんトランビプラス
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引用元:しんきんトランビプラス(https://shinkin.tranbi.com/)
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利用するデメリット
  • 買い手が適正なのかどうかは自社での見極めもしくは相談先を別途確保する必要がある
料金
売り手は完全無料

※1参照元:M&Aフォース(https://www.ma-force.co.jp/consultant/
※2参照元:Career Ladder(https://careerladder.jp/blog/ranking/
※3参照元:日本M&Aセンター(https://recruit.nihon-ma.co.jp/about-us/data-overview/
※4参照元:日本M&Aセンター(https://www.nihon-ma.co.jp/groups/message.html
※日本M&Aセンター費用の参照元https://www.nihon-ma.co.jp/service/fee/convey.html
※5参照元:トランビ(https://www.tranbi.com/