解体工事業の事業承継事例

目次

解体工事業は、老朽建物や空き家、都市整備などを背景に需要が続く業界です。一方で、高齢化や後継者不足による廃業リスクも高まっています。この記事では、解体工事業における事業承継の成功事例や、承継を進める上での準備・注意点を紹介します。

解体工事業とは?
業種の概要

解体工事業は、建築物や構造物を安全かつ計画的に取り壊す専門業種です。2016年6月1日施行の改正建設業法により、「とび・土工工事業」から独立し、建設業許可業種として新設されました。これにより、解体工事を営むには原則として「解体工事業」の許可が必要となりました。

対象となる建物は、戸建住宅から高層ビル、プラント、商業施設まで多岐にわたり、作業には重機の操作やアスベスト対策など高度な専門知識と技術が求められます。

2020年代以降、老朽化した建築物の増加や空き家問題、都市再開発の進展などを背景に、解体工事の需要は高まっています。特に高度経済成長期に建てられた建物の老朽化が進み、解体の必要性が増しています。

また、解体工事に伴い発生する建設副産物の再資源化も重要な課題となっており、循環型社会の実現に向けた取り組みが求められています。

参照元:(PDF)福井県「建設業の許可業種に『解体工事業』が新設されます」(https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/kanri/kyoka_d/fil/kaitai01.pdf
参照元:(PDF)公益社団法人 全国解体工事業団体連合会「解体工事業界を取り巻く現状・課題、取組等」(https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/10_shiryou3-4.pdf

解体工事業界の事業承継の
現状と課題

全国の解体業者の多くは中小企業や個人事業であり、経営者の高齢化後継者不足が大きな課題です。特に技術者・専任技術者の確保や産業廃棄物処理体制の維持は、承継において重視されるポイントとなります。

また、解体業特有の構造として、ゼネコン等を頂点とした多重下請構造により利益確保が難しく、営業力や財務体質の見直しも求められる状況です。こうした課題を乗り越える手段として、M&Aや親族・従業員承継による経営引継ぎが注目されています。

解体工事業の事業承継事例

実際に承継やM&Aで事業を次世代に繋いだ事例をご紹介します。成長と継続を両立させた実例から学ぶことは多く、現場経営者にとって具体的なイメージが持てるでしょう。

【成功事例①:カシワバラ・
コーポレーションのケース】

概要大規模建物の改修・再生を手がける企業による、解体業との連携型M&A
課題老朽プラント解体など成長分野への対応力強化
対応策東京都八王子の解体事業者・小椋組を完全子会社化し、事業基盤を拡充

結果

小椋組がグループに加わり、老朽化したプラント設備の解体と再建の需要増加に対応可能になりました。

カシワバラ・コーポレーションにとっては関東圏での営業力施工ノウハウが加わり、プラント再生分野の提案に幅が出たことが大きな収穫です。

小椋組側も、グループの一員となってから業務体制が安定しており、既存の現場力を生かした事業運営が続けられています。

参照元:M&A総合研究所公式HP(https://mastory.jp/解体工事MA

【成功事例②:
ヒロセホールディングスのケース】

概要建設資材リース企業による、特殊工事分野への本格参入
課題仮設資材事業に加えて、耐震・解体ニーズへ対応する体制の整備
対応策千葉県の解体・補強工事会社ファクトの株式を取得し、子会社化

結果

ファクトの合流により、ヒロセホールディングスは仮設資材リースに加え、耐震補強や構造補修といった専門工事領域にも本格的に対応できるようになりました。

これまで外注していた技術領域を自社内に取り込むことで、現場ごとの提案力や対応スピードが向上し、工事全体の質と効率の両面でメリットが出ています。

ファクト側も、今まで踏み込めなかった規模分野の案件にもチャレンジできるようになりました。

参照元:M&A総合研究所公式HP(https://mastory.jp/解体工事MA

解体工事業の承継を
成功に導くための準備と支援策

承継成功には、現場や取引先との信頼関係を保ちつつ、法務・許認可・技術体制を丁寧に引き継ぐ準備が欠かせません。以下のようなポイントを意識しておくことが重要です。

建設業許可の継承要件と行政対応

解体工事業の許可は、自動的に引き継がれるわけではありません。譲渡、合併、分割、相続といった承継形態に応じて、建設業法にもとづく認可申請が必要です。

例えば相続の場合は、被相続人の死亡から30日以内に認可申請を行わないと、許可が失効するおそれがあります。期限を過ぎれば、一から新規申請が必要になるため注意が必要です。

申請時には、専任技術者の配置や経営業務の管理責任者などの要件も確認されます。早めに承継先の体制を整えておくことが、スムーズな引き継ぎにつながるでしょう。

重機や車両など資産の名義・契約整理

解体工事では、油圧ショベルやダンプなどの重機が業務の中核です。譲渡時には、こうした設備の所有権リース契約担保設定などを明確に整理しておく必要があります。

名義変更の手続きを怠ると、引き継ぎ後に使用できなくなったり、金融機関とのトラブルにつながる可能性も。資産台帳の見直しや、金融・リース会社との確認も忘れず行いましょう。

特に注意したいのが、車両が経営者個人名義になっているケースです。法人として使用を継続するには、正式な名義移転が不可欠です。

技術者・職人のモチベーション維持策

現場を支える職人や技術者は、会社の「信用そのもの」ともいえる存在です。承継によって待遇や立場に変化が生じると、退職やモチベーション低下のリスクが高まります。

承継前から早めに従業員と向き合い、「今後の方針」「体制の変更点」「処遇」について丁寧に説明することが大切です。経営が変わっても現場は変わらない、という安心感は信頼維持につながります。

また、技術者の中には建設業許可に不可欠な国家資格者も含まれているため、資格者の引継ぎも欠かせない要素です。

地域の元請・工務店との
信頼関係継続の工夫

解体工事業は、地域の元請や工務店、工事関係者との信頼関係で成り立つ面が大きい業種です。会社の名義が変わっただけで取引を見直すという元請も、現実には存在します。

こうした不安を防ぐためにも、承継前後のタイミングで、引き継ぐ側の経営者や担当者が挨拶に回り、継続の意思と体制をしっかり伝えることが重要です。

現場同行や、既存取引先との打ち合わせへの同席など、実務の中で“顔をつなぐ”機会をつくると効果的です。

まとめ

解体工事業の承継では、技術設備地域関係の「三位一体の引継ぎ」が鍵を握ります。M&Aや親族・従業員承継によって、雇用や信用を守りながら持続的に発展も可能です。

今回紹介した事例のように、適切な準備と信頼できるパートナーとの連携があれば、承継は大きな飛躍のチャンスにもなり得ます。将来の不安をチャンスに変えるためにも、まずは早期の情報収集と相談を始めてみてはいかがでしょうか。

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※1参照元:M&Aフォース(https://www.ma-force.co.jp/consultant/
※2参照元:Career Ladder(https://careerladder.jp/blog/ranking/
※3参照元:日本M&Aセンター(https://recruit.nihon-ma.co.jp/about-us/data-overview/
※4参照元:日本M&Aセンター(https://www.nihon-ma.co.jp/groups/message.html
※日本M&Aセンター費用の参照元https://www.nihon-ma.co.jp/service/fee/convey.html
※5参照元:トランビ(https://www.tranbi.com/