建設業の事業承継で受けれる税制優遇

建設業の事業承継では、株式評価が高くなりやすく、相続税や贈与税などの税負担が大きな課題となります。特に、非上場株式を後継者に引き継ぐ際は多額の納税資金が必要となるケースが多く、事業承継そのものを阻む要因となりかねません。

本記事では、「事業承継税制」や補助金制度の活用方法を中心に、建設業ならではの税務対策についてわかりやすく解説します。

建設業の事業承継における税務の重要性とは？

建設業は公共工事や大型案件を抱えることが多く、安定した収益基盤を持つ企業ほど株式評価が高額になりやすい特徴があります。その結果、相続税・贈与税の負担が重くなり、承継後の資金繰りに影響するリスクがあります。

また、建設業許可の維持や取引先との契約継続を考えると、スムーズな承継のためには早期の税務対策が不可欠です。

事業承継税制とは？概要と建設業での活用メリット

事業承継税制は、非上場株式の相続・贈与にかかる税金を一定条件のもとで猶予・免除できる制度です。建設業においても大きな節税効果を発揮する可能性があります。

「特例措置」と「一般措置」の違い

事業承継税制には、従来からある「一般措置」と、2018年から拡充された「特例措置」があります。特例措置では対象株式の最大100％まで納税猶予が可能であり、要件を満たせば税負担を大幅に軽減できます。

対象となる中小企業・後継者要件

対象となるのは中小企業基本法に定める規模以下の会社であり、後継者は代表権を有し、継続的に事業を運営する意思が必要です。建設業では特に「許可の承継」も同時に考慮する必要があります。

非上場株式の相続・贈与にかかる納税猶予制度の仕組み

承継時に発生する相続税・贈与税を全額または一部猶予し、一定条件を満たした場合は最終的に免除されます。これにより、納税資金の確保が難しい場合でも事業承継を円滑に進められます。

建設業における株式評価とその節税効果

建設業は保有資産（重機、車両、不動産）が多く、株式評価が高く算定されがちです。事業承継税制を活用することで、この高い評価額に伴う税負担を大幅に抑えることが可能です。

税務対策として活用できる支援制度・補助金

• 中小企業庁「事業承継・引継ぎ補助金」：事業承継計画の策定やM&A活用に関わる費用の一部を補助。
• 各自治体の独自支援：都道府県ごとに、無料相談窓口や士業派遣、補助制度を設けているケースがあります。
• 金融機関・信用保証協会：承継資金や納税資金の融資制度、税務相談パッケージを用意している場合があります。

相続税・贈与税を抑えるための具体的な方法

• 株式の段階的贈与：暦年贈与や相続時精算課税制度を活用し、計画的に株式を移転。
• 役員退職金の活用：退職金の支給により会社の資産を減らし、株式評価を引き下げる。
• オーナー借入金・不動産の相続対策：資産負債の調整により評価額を下げる工夫。
• 後継者名義での資産運用：将来の納税資金を確保するため、承継前から準備を進める。

非上場株式の評価対策と建設業の注意点

評価方法の違い

非上場株式の評価には「類似業種比準方式」と「純資産価額法」があり、建設業の収益性や資産構成に応じて有利な方式を選択することが可能です。

建設業特有の資産・負債構成

重機・車両・資材在庫・未収入金などが評価額に大きく影響します。これらを正しく精査することが重要です。

評価引き下げのための事前対策

役員報酬の調整や資産の整理など、承継前に行える対策があります。専門家の指導のもとで早めに準備しましょう。

税理士との連携の重要性

建設業の事業承継は複雑な評価要素が多いため、建設業の会計・税務に詳しい税理士との連携が不可欠です。

まとめ

建設業の事業承継では、株式評価が高く税負担が大きくなりやすいという業界特性があります。そのため、事業承継税制や補助金などの活用は経営を守るための必須対策です。

制度を理解した上で、税理士や専門家と連携し、早めに具体策を講じることが、スムーズで納得感のある承継につながります。