建設業を営むオーナーが事業の幕引きを考えるとき、気になるのは「いくら費用がかかるのか?」という点ではないでしょうか。
本記事では、建設業の廃業にともなう主なコストとその内訳を解説し、検討すべき“他の選択肢”までご紹介します。
廃業は「最後の選択肢」として慎重に判断する必要があります。ここでは、廃業を決断する前に理解しておきたい背景や代替策、そして廃業にかかる費用の現実について解説します。
帝国データバンクの調査によると、2024年の全国における休廃業・解散件数は69,019件となり、前年比16%増と過去最多を記録しました。建設業を含む中小企業においても、事業継続を断念するケースが急増しています。
後継者不在や経営者の高齢化、人材確保の難しさに加え、赤字経営が続く中で早期の撤退を選ぶ企業も少なくありません。資産超過で黒字にもかかわらず、将来の不安から自主的に廃業を決断する例も増えています。
また、中小企業白書の統計によれば、非一次産業における年間の廃業件数は平均で約27万件にのぼり、廃業率も決して低くありません。こうした背景を踏まえ、廃業という選択をする前に、事業承継やM&Aといった代替手段を模索する企業も増えています。
廃業以外にも、親族・従業員への承継やM&Aによる第三者承継といった選択肢があります。
たとえば、親族に継がせれば社風を守りやすく、従業員への承継なら内部に理解のある人材による継続が可能です。M&Aであれば、譲渡益が得られるうえ、雇用や取引先の関係を保てる利点もあります。
自社の状況に応じて、慎重に検討する価値がある選択肢です。
廃業は単に「会社を閉じる」だけでは済みません。
例えば、解散登記には登録免許税30,000円、清算人選任登記に9,000円、清算結了登記に2,000円、官報公告には約32,000~40,000円、さらに専門家報酬で20万~50万円ほどが必要になります。
在庫や設備を一括処分する場合にも数十万~数百万円かかり、賃借物件の原状回復費用などを合算すると、数百万円以上の想定外出費が発生することもあります。
これらを事前に把握しておけば、「廃業コストが思った以上に膨らむ」という衝撃を避けられ、余裕を持った資金準備が可能になります。想定外の出費を回避し、計画的に手続きを進めるための第一歩として、費用見積もりをしっかり行いましょう。
建設業を廃業する際には、目に見える直接的な支出だけでなく、見落とされやすい間接費用も発生します。この章では、主な費用項目を分類し、それぞれの特徴を整理して解説します。
退職金には法定の最低基準がありません。そのため、多くの企業では就業規則や退職金規程で「法定外」の支給ルールを設けています。
こうした独自ルールでは、法令よりも高額な退職金が発生することが多く、廃業時には想定を超える費用負担につながる可能性があります。
たとえば「勤続20年以上で月給30カ月分支給」という規定があると、退職者が複数名いれば数千万円もの出費になることも。早めに自社の規定を確認し、試算しておくことが大切です。
退職にともない、厚生年金・健康保険の資格喪失や、雇用保険の離職票発行といった各種手続きが必要になります。これらは従業員の失業給付にも影響するため、漏れなく正確に進める必要があります。
社内で対応する場合は担当者の作業時間・人件費がかかり、外部に依頼する場合は社会保険労務士への報酬が発生します。費用の目安は数万円程度ですが、従業員数や依頼範囲によって異なるため、あらかじめ見積もりを確認しておくことが重要です。
また、廃業日と手続き日付の整合性が取れていない場合、役所とのやり取りが複雑になることもあるため、専門家に依頼することでトラブルの防止にもつながります。
企業が廃業を決断する際、金融機関との借入契約や未払いの債務について清算する必要があります。
特に建設業では、長期の設備資金や短期の運転資金として借入が残っているケースが少なくありません。
返済不能に陥ると、企業のみならず経営者個人の資産や信用にも影響が及びます。
借入契約には期限の利益喪失条項が含まれていることが多く、廃業を届け出ることで分割返済の権利を失い、一括返済を求められる場合があります。
まとまった返済資金がない場合は、不動産や機材などの資産を売却して充当する必要が生じるため、早めの資金繰り対策が求められます。
中小企業では、経営者個人が法人の借入に対して連帯保証人となっていることが多く、廃業後も保証債務が残る可能性があります。
その場合、経営者自身の個人資産から返済を求められるリスクが生じます。
現在は「経営者保証ガイドライン」に基づく柔軟な対応もありますが、金融機関との協議が不可欠です。
建設業の廃業では、重機や仮設材などの処分も大きな負担になります。状態が良ければ買取業者に売却できる可能性がありますが、廃棄する場合は産廃処理費用が発生します。
契約中のリース物件や仮設資材については、解約や原状回復義務があるため、事前確認が重要です。
売却と廃棄のいずれが有利かを見極めるには、資産台帳や減価償却額を確認したうえで、専門家に相談することをおすすめします。
建設業の廃業では、保有する重機や車両、仮設材などの処分が必要です。
中古市場での売却が可能な場合もありますが、古い機材や故障品は廃棄対象となり、解体・運搬・産廃処理などで費用がかさむこともあります。
処分方法により負担額が大きく変わるため、複数業者による査定や市場価格の調査を早めに行い、費用と回収額のバランスを見極めておくことが重要です。
建設機器や備品をリース契約で使用している場合、途中解約時に違約金や未払いリース料が発生することがあります。
また、土地や建物の賃貸契約では退去時の原状回復義務が課されるため、仮設建物の撤去や整地作業などに費用がかかる可能性もあります。
契約書の確認と費用見積もりを早めに行うことで、廃業後の負担を軽減できます。
建設業を正式に廃業する際には、都道府県へ建設業許可の廃止届出書を提出する必要があります。
届出には添付書類が複数あり、期限を過ぎると行政指導を受ける可能性もあります。
また、許可廃止は信用に影響するため、元請や取引先への説明・通知も欠かせません。トラブルを防ぐには、計画的な手続きと丁寧な連絡が求められます。
建設業許可の廃止届出は自社でも対応できますが、行政書士に依頼することで、手続きの正確性や処理スピードが確保されやすくなります。
報酬の相場は3万円〜5万円程度が一般的とされており、届出の種類や添付書類の有無、他の変更手続きとあわせて依頼するかどうかで金額が前後します。
複数業種の廃止や変更届の同時申請、特急対応を依頼するケースでは、追加費用が発生する場合もあります。また、都市部ではやや高めの報酬が設定されている傾向もあります。
正式な金額は、依頼内容や地域によって異なるため、事前に見積もりを取得し、報酬体系と業務範囲を確認しておくと安心です。
建設業許可を廃止すると、契約中の工事案件や元請との関係整理が必要になります。工事途中で契約を解除する場合は合意書作成や違約金の精算が発生することもあり、書面整備や調整に伴う費用がかかる可能性があります。
通知を怠ると損害賠償のリスクが生じ、法的トラブルに発展する恐れもあります。弁護士や行政書士などの専門家に相談する場合は、相談料や書類作成料などのコストも考慮しておく必要があります。
また、経営事項審査や技術者情報も抹消されるため、将来的に再開業を視野に入れている場合は、再取得に伴う登録料や準備費も含めて対応方針を検討することが重要です。
廃業には多大な費用や社会的影響がともないます。ここでは、“会社を残す”ための選択肢として、親族・従業員・第三者による事業承継をご紹介します。
親族へ事業を承継する場合は、経営知識や人脈の継承を見据えた教育を早期に始めることが重要です。
経営者交代後の混乱を避けるため、段階的に意思決定権を移していく引継ぎ計画も必要です。
さらに、生前贈与や株式譲渡などによる資産移転を進める際は、「事業承継税制」を活用することで相続税・贈与税の負担を大幅に抑えることができます。
専門家の助言を受けながら、自社に合った制度の活用を検討しましょう。
身内に後継者がいない場合でも、信頼できる従業員がいればMBO(マネジメント・バイアウト)による承継が可能です。
社内に精通した人材が事業を引き継ぐため、取引先や従業員の理解も得やすく、スムーズな移行が期待できます。
ただし、資金調達が課題となることもあるため、日本政策金融公庫や信用保証協会などの支援制度を活用するケースが増えています。
事前に金融機関や地域の事業承継ネットワークに相談するのが有効です。
事業承継時には株式評価額や贈与税・相続税といった税負担が大きくのしかかりますが、「特例事業承継税制」を利用すれば、一定の条件下で納税猶予や免除が受けられます。
また、中小企業庁や自治体では、承継に伴う専門家費用・登記・診断調査などに使える補助金制度を整備しています。
制度の利用には事前申請や要件確認が必要なため、商工会や認定支援機関と連携しながら進めましょう。
建設業における技術者、元請との取引実績、地域密着の顧客基盤は、第三者にとっても大きな経営資源です。
M&Aを活用すれば、これら無形資産を引き継ぎつつ、廃業を回避することが可能です。
自社単独では存続が難しくとも、譲受企業と統合することで、組織としての存続や従業員の雇用継続につながるケースもあります。
設備や許認可の維持も含めた包括的な承継として有効な選択肢です。
廃業を選ぶと退職金や処分費用など多額のコストが発生しますが、M&Aによる第三者承継であれば、企業価値に見合った譲渡対価を受け取ることが可能です。
特に黒字経営を維持している企業は「今が売り時」と見なされることも多く、有利な条件での交渉が期待できます。
事業の価値を正しく評価してもらうためには、早めに準備を始め、適切な支援者を見つけることが成功の鍵となります。
M&Aを円滑に進めるためには、仲介会社のサポートが不可欠です。
相手先企業の探索、条件交渉、デューデリジェンス(財務・法務調査)、契約書作成などを一括で支援してくれます。
手数料は一般的に成功報酬型で、譲渡価格の5%程度が相場です。
着手金が必要なケースもあるため、サービス内容や報酬体系を複数社で比較し、自社に合った仲介パートナーを選ぶことが重要です。
建設業の廃業には、数百万円から数千万円にのぼるコストが発生する可能性があります。経営が黒字でも費用面での負担が重く、慎重な判断が求められます。
一方で、親族承継や従業員への引継ぎ、M&Aといった代替手段を選べば、会社の価値や雇用を守りながら、資産の有効活用も可能になります。
廃業という決断を下す前に、専門家と相談しながら、自社の状況に合った承継方法や費用を抑える手段を見つけていくことが大切です。
建設業の事業承継は誰に相談するかが重要な鍵を握ります。
企業の求める承継の形を実現してくれる相談先を目的別に紹介します。


※相談やマッチング
機能利用は無料

※1参照元:M&Aフォース(https://www.ma-force.co.jp/consultant/)
※2参照元:Career Ladder(https://careerladder.jp/blog/ranking/)
※3参照元:日本M&Aセンター(https://recruit.nihon-ma.co.jp/about-us/data-overview/)
※4参照元:日本M&Aセンター(https://www.nihon-ma.co.jp/groups/message.html)
※日本M&Aセンター費用の参照元https://www.nihon-ma.co.jp/service/fee/convey.html
※5参照元:トランビ(https://www.tranbi.com/)