事業承継では、親族承継・従業員承継・第三者承継(M&A)など、複数の承継方法があり、それぞれに応じた準備や手続きが求められます。本記事では、承継形態ごとの特徴や進め方、必要な手続き、M&Aのメリットとリスクから仲介会社選びのポイントまでわかりやすく解説します。

建設業許可の空白期間を防ぐため、以下の順序で手続きを進めます。
2020年の建設業法改正による最大のメリットは、事前の「認可」を受けることで、許可の空白期間を作らずに事業承継が可能になった点です。
旧制度では許可の取り直しが必要でしたが、現在はスムーズな地位の承継が認められています。本記事では、この「事前認可」のルールに基づき、親族内承継・従業員承継・M&Aそれぞれの具体的な手続きを解説します。
親子・兄弟姉妹など親族間で株式(または出資持分)や経営権を移転する形を「親族内承継」といいます。譲渡は、対価の発生する有償譲渡のほか、無償譲渡(贈与)としても実施可能です。
主なメリットは以下の3つです。
「事業承継税制(法人版)」を活用することで、贈与税・相続税の納税が猶予または免除される場合があります。
社内貸付や親族間融資を含め、資金調達手段の選択肢が多く、外部からの資本調達に頼らずに承継を進めやすいのが特徴です。
親族間の承継であれば、従来の受注ルート、協力会社との関係性、発注者からの信頼などを維持しやすく、対外的な信用不安が生じにくい点が利点です。
また、創業者が培った経営方針や現場対応のノウハウも自然に引き継がれやすいため、社内の混乱も最小限に抑えられます。
親族内承継における株式移転は、まず株主総会(または株主全員の同意)による譲渡承認決議を行い、その内容を記録した議事録を作成します。
次に、株式譲渡契約書を作成し、譲渡株数・価格・支払条件・違約条項などを明記のうえ、譲渡人・譲受人双方が署名捺印。
譲渡完了後は、株主名簿の更新を行い、株券を発行している場合は裏面への譲渡記録も必要です。これにより、法的・商業的な所有者の証明が可能となります。
代表取締役や取締役が交代する場合は、法務局での変更登記が必須になります。
必要書類は以下のとおりです。
登記の更新が遅れると、対外契約の有効性や金融機関の信用審査に影響するため、承継と同時期に完了させる必要があります。
あわせて、建設業許可における「経営業務管理責任者(経管)」や「専任技術者」に該当する役員が交代する場合、所轄行政庁への許可変更届出も必要(※)です。
建設業許可は、法人または個人を単位として発行されるため、承継の形式により許可の扱いが異なります。
許可の空白期間が発生すると公共工事の受注資格や取引継続に影響が及ぶため、行政書士などの専門家と連携し、事前に必要な対応を確認しておきましょう。
親族内承継で活用できる「事業承継税制(法人版)」は、一定の条件を満たすことで、非上場株式にかかる相続税・贈与税の納税が猶予され、将来的に免除される可能性がある制度です。
主な適用条件は以下の通りです。
この制度を活用することで、多額の納税資金を準備せずに事業承継を進めることが可能となります。ただし、制度内容は年度により変更される可能性があるため注意が必要です。
親族内承継では、経営業務管理責任者や専任技術者の要件取得に数年を要することがあるため、事前に計画を立てて取り組むことが重要です。
役員登用や資格取得、書類整備を段階的に進めるとともに、後継者には実務OJTや財務研修を通じた育成が求められます。
また、都道府県の事業承継支援センターや商工会議所などの支援機関を活用することで、手続きの漏れや教育内容の偏りを防ぐことができるでしょう。
従業員承継では、現場統率力や協力会社との調整力を重視し、施工管理技士資格の有無やプロジェクト管理経験をもとに候補者を選定。育成では、経営判断力を高めるためにマネジメント研修や財務講座の受講、OJTを通じた実務移管を段階的に進めるとよいでしょう。
まず、承継候補者の意思を面談等で確認し、同意内容を文書化します。
次に、株主総会や取締役会で株式譲渡または新株発行を承認し、株式譲渡契約書を締結。
資金調達方法や対価支払条件も併せて整理し、登記変更手続きまで含めて一連の流れとして計画的に進めましょう。
承継後の混乱を避けるため、事前に現経営者と後継者の役割分担を社内に明示し、従業員説明会で組織体制や方針を共有することが重要です。
さらに、一定期間は現経営者が業務をサポートすることで、顧客や協力会社からの信頼継続と現場の安定につながります。
都道府県の事業承継支援センターや商工会議所では、従業員承継に関する無料相談、後継者教育プログラムの紹介、専門家派遣などを実施しています。
税理士による株式評価、行政書士による許可承継支援、金融機関との資金調達連携も有効活用することで、承継実務を円滑に進められます。
建設業の事業承継においては、株式の譲渡、許認可の変更、行政手続き、法務・税務対応など多岐にわたる準備が必要です。
親族承継・従業員承継・第三者承継(M&A)で、共通して求められる主な手続きと、確認すべきチェック項目をあわせて整理していますのでぜひご活用ください。
事業承継では、会社の「経営権」や「意思決定の権利」を次の人に引き継ぐために、株式や出資持分を譲る手続きが必要になります。
建設業許可の維持には、後継者が「経営業務管理責任者」および「専任技術者」の要件を満たしていることが前提となります。これらの体制が不備の場合、許可が一時的に失効する可能性もあるため、承継前から体制確認が必須です。
経営業務管理責任者(経管):
専任技術者(専技):
※注意点: 要件を満たさない場合、現在の役員を一定期間残ってもらうか、補佐者を置く等の対策が必要です。
| 比較項目 | 従来の制度 (事後届出) |
現在の制度 (事前認可) |
|---|---|---|
| 許可の効力 | 一度リセットされる (空白期間あり) |
途切れない (空白期間なし) |
| 許可番号 | 変わる | 変わらない |
| 経営年数・実績 | リセットされる | 通算される |
2020年10月1日の建設業法改正により、代表者や法人変更時における許認可の事前承継制度が整備され、事前に許可取得を申請することができるようになりました。
2020年の改正建設業法(第17条の3)により導入された事前認可制度を活用する手順は以下の通りです。
事業承継の計画が立ち上がったら、まずは管轄の行政庁(都道府県知事許可なら土木事務所等、大臣許可なら地方整備局)へ事前相談に行きます。
後継者が必要な要件(経営業務管理責任者や専任技術者など)を満たしているか、欠格要件に該当しないかなどを事前に確認し、許可が確実に下りる見通しを立てます。この相談は承継予定日の3〜5ヶ月前には開始するのが理想です。
基本合意や契約締結(※)を行った後、本申請を行います。審査にかかる標準的な期間は、知事許可で約1ヶ月〜、大臣許可で約3〜4ヶ月です。
この審査期間を見越して、契約書上の「承継予定日(効力発生日)」を設定する必要があります。
※契約書には「行政庁の認可を受けることを効力発生の条件とする」といった停止条件を盛り込むことが重要です。
審査を経て「認可」が下りると、行政庁から通知書が届きます。
その後、契約で定めた「承継日」を迎えると、法的に建設業許可の地位が承継されます。空白期間(無許可期間)を発生させることなく、同じ許可番号のままシームレスに工事や営業活動を継続することが可能です。
事業承継にあたっては、多岐にわたる書類の準備・提出が必要となります。
記載内容の不備や手続きの遅れは、許可喪失・税務否認といったリスクに直結するため、各書類を準備・整備し、適切な専門家と連携して進めましょう。
最も注意が必要な点は、事業承継によって建設業許可は途切れずに引き継げたとしても、「経営事項審査(経審)の評点」や「入札参加資格」は自動的には引き継がれないということです。
許可の承継とは別に、承継後は速やかに「承継の事実」を届出し、以下の対応を行う必要があります。
公共工事を主とする企業にとって、この空白期間の発生は経営に直結する重大な問題です。
入札資格を最短で回復させるための緻密なスケジュール調整について、必ず建設業専門の行政書士やM&Aコンサルタントへ相談してください。
建設業界では経営者の高齢化や人材不足が深刻化し、後継者不在という課題が広がっています。M&Aベストパートナーズによると、建設業界のM&A件数は2020年に国内同士で154件と、2000年以降で最多を記録しました。
近年では、人材獲得、技術力の獲得など、動機も多様化し、成長戦略としても活用されています。
建設業の許可制度や入札資格に詳しく、過去に同業種の取引実績がある仲介会社を選定することが重要です。料金体系が明確で、着手金・成功報酬の条件や最低手数料額が事前に提示されているかを確認しましょう。また、契約交渉、許可承継、登記、届出など一連の実務を段階ごとに支援してくれるかもあわせて見極める必要があります。
M&Aでは、顧客ネットワークや職人・技術者などの経営資源を引き継ぐことで、後継者不在という課題を解消できます。
一方で、譲受企業との経営方針や組織文化の違いにより、従業員の離職や協力会社との関係悪化が生じることがあり、また、建設業許可の承継に必要な変更届や申請を怠った場合は、公共工事の入札資格を一時的に失うリスクも発生します。
こうしたリスクを抑えるには、契約段階で「雇用継続の期間」や「研修実施の義務」などを明文化するとともに、建設業許可の承継や各種変更届を漏れなく実施するための社内体制を整える必要があります。
建設業M&Aの経験が豊富で、案件の取り扱い実績がある会社や、手数料体系の透明性に加え、デューデリジェンス(事前調査)や契約交渉、許可承継後のサポート体制が整っているかも含めて検討しましょう。
事業承継では、親族承継・従業員承継・第三者承継(M&A)といった複数の選択肢が存在し、それぞれの承継方法にあわせて必要な手続きが発生します。
各承継方法に必要な手続きやリスクを理解し、事前にスケジュールを立てたうえで、制度に詳しい専門家と連携することが、円滑かつ確実な承継の実現につながります。
経営のバトンを次世代へ託すために、まずは現状の整理から着手しましょう。
建設業の事業承継は誰に相談するかが重要な鍵を握ります。
企業の求める承継の形を実現してくれる相談先を目的別に紹介します。


※相談やマッチング
機能利用は無料

※1参照元:M&Aフォース(https://www.ma-force.co.jp/consultant/)
※2参照元:Career Ladder(https://careerladder.jp/blog/ranking/)
※3参照元:日本M&Aセンター(https://recruit.nihon-ma.co.jp/about-us/data-overview/)
※4参照元:日本M&Aセンター(https://www.nihon-ma.co.jp/groups/message.html)
※日本M&Aセンター費用の参照元https://www.nihon-ma.co.jp/service/fee/convey.html
※5参照元:トランビ(https://www.tranbi.com/)