建設会社の事業承継やM&Aでは、「契約が成立したら終わり」ではなく、その後の統合プロセス=PMIが成否を左右します。とくに建設業は人材や現場に依存する度合いが高く、統合を誤ると売上や許可、信用を一気に失うおそれもあります。本記事では、建設業M&AにおけるPMIの基本と実務ポイントを分かりやすく解説します。
PMIとは、Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)の略で、M&A成立後に行う組織・人・業務などの統合プロセスを指します。株式や事業を譲渡しただけでは、シナジー効果は生まれません。実際に、会計や人事制度、現場の進め方をすり合わせていくことで、ようやく「1+1を2以上にする」状態を目指すことができます。
その意味で、M&Aはゴールではなくスタートです。とくに建設業のPMIでは、建設業許可や技術者の配置、長年の取引先との信頼関係など、事業の根幹に関わる要素が統合の影響を受けます。統合の進め方を誤ると、技術者が退職して許可要件を満たせなくなったり、元請や自治体からの受注が減少したりするリスクがあるため、慎重かつ計画的なPMIが欠かせません。
PMIでは、「どの領域を」「どの順番で」統合していくかを整理することが重要です。まず押さえたいのが、組織・人事の統合です。役職や報酬テーブル、評価制度、雇用条件に大きな差があると、従業員の不満や退職につながります。短期的には大きな差をつけない、段階的に統合するなど、ソフトランディングを意識した設計が求められます。
次に、業務・会計・管理体制の統合です。工事受注〜見積〜施工〜請求・入金までの業務フローや、原価管理の方法を標準化していくことで、管理のムダや属人化を減らせます。また、企業文化・風土の融合も欠かせません。トップダウン型か現場裁量型か、残業や安全意識に対する考え方など、日々の価値観の差を埋める工夫が必要です。建設業固有の観点としては、キーパーソンである技術者・現場職人の定着と、進行中工事の継続対応が最重要テーマになります。
建設業のPMIで特によく見られるのが、技術者の離職です。統合後の待遇や役職に不満を持ったり、新しい方針になじめなかったりして、主任技術者や監理技術者が退職してしまうと、建設業許可の要件を満たせなくなるリスクがあります。回避策としては、キーパーソンとの個別面談や処遇の明確化、一定期間の特別な手当・ポジションの設定などが有効です。
また、現場ごとの「独自ルール」が整理できず混乱するケースもあります。安全書類の扱いや協力会社への指示方法がバラバラだと、事故やクレームの原因にもなります。標準ルールを定めつつ、現場の知恵は残すというバランスが重要です。さらに、統合後の担当変更により、元請や自治体との信頼関係が希薄になり、発注が減る例も見られます。主要取引先への早期の挨拶と、旧経営陣・キーパーソンの同席を徹底することで、関係性の断絶を防ぐことができます。風土の違いから従業員が不信感を抱き退職することもあるため、「何が変わり、何は変わらないか」を丁寧に説明する姿勢が求められます。
建設業のPMIを成功させるには、M&Aの検討段階から統合計画(PMI計画)を描いておくことが欠かせません。クロージング後に慌てて考えるのではなく、「1年後にどういう組織・人員・工事ポートフォリオにしたいか」を明確にしておくことで、買収価格や契約条件にも反映させやすくなります。また、統合後も旧経営陣が一定期間残ることで、取引先や従業員への説明役・橋渡し役を担ってもらえるメリットがあります。
従業員の不安を抑えるためには、従業員説明会や1on1面談、社内報・社内ポータルによる情報共有が有効です。噂ではなく公式な情報が届くことで、安心感が大きく変わります。さらに、外部の専門家を活用するのも一案です。PMIに詳しいコンサルタントや社労士、建設業に精通したアドバイザーが入ることで、感情的な対立を避けつつ、客観的な視点で統合を進めやすくなります。
PMIは、M&Aを成功に導く「真の勝負どころ」と言えます。とくに建設業は現場主導・人材依存型のビジネスであるため、統合に失敗すると、売上だけでなく、許可要件や取引先からの信頼、技術者の蓄積といった基盤そのものが揺らぎかねません。逆に言えば、準備・計画・誠実なコミュニケーションにしっかり取り組めば、PMIの成功=企業の未来を守ることにつながります。M&Aを検討する際には、契約条件だけでなく、その後のPMIまで視野に入れて進めることが重要です。
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※相談やマッチング
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※1参照元:M&Aフォース(https://www.ma-force.co.jp/consultant/)
※2参照元:Career Ladder(https://careerladder.jp/blog/ranking/)
※3参照元:日本M&Aセンター(https://recruit.nihon-ma.co.jp/about-us/data-overview/)
※4参照元:日本M&Aセンター(https://www.nihon-ma.co.jp/groups/message.html)
※日本M&Aセンター費用の参照元https://www.nihon-ma.co.jp/service/fee/convey.html
※5参照元:トランビ(https://www.tranbi.com/)