建設業M&Aで使われる掛目とは?

目次

M&Aの企業価値評価では、財務諸表に記載された帳簿上の金額がそのまま評価額として採用されるわけではありません。実態に即した価値を反映させるために、資産の一部に対して調整を行うケースがあり、その代表的な考え方が「掛目」です。

掛目は、建設業を含む中小企業M&Aで頻繁に用いられる概念であり、売掛金や在庫、工事関連の未収資産などの評価額を見直す際に使われます。適切に理解しておくことで、買い手との交渉を有利に進めることにもつながります。

掛目とは?M&A評価における基本概念

掛目の定義:資産の評価に対して控除をかける調整率

掛目とは、企業価値評価において「特定の資産に対してリスクや不確実性を考慮し、帳簿価額に一定の控除を加える調整率」のことを指します。たとえば1000万円の売掛金があっても、そのすべてが確実に回収できるとは限らないため、90%として評価する、といった考え方です。

このように、資産の「実際に換金できる価値」を見極めるために、掛目という調整が使われます。買い手からすれば、帳簿上の金額が必ずしも実態を反映していないため、慎重に評価する必要があるからです。

なぜ掛目が設定されるのか?

掛目が設定される主な理由は、以下の2点に集約されます。

財務諸表に記載された金額はあくまで帳簿上のものであり、実際の価値と乖離することがあります。こうしたリスクを補正するために、掛目が設定されるのです。

M&A実務で頻出する“調整”の一つ

掛目は、M&Aの実務において非常に頻出する調整項目です。とくにデューデリジェンスの段階で「実態に合わない資産」や「金額が過大に計上されている可能性がある資産」に対して、買い手側が保守的に判断する際に活用されます。

そのため、売り手としては掛目の仕組みを理解し、必要な資料を揃えておくことで、評価の下落を防ぐことが期待できます。

掛目が適用される主な資産とは

売掛金・在庫(滞留・回収リスク)

掛目が最も頻繁に適用されるのが売掛金と在庫です。以下のようなリスクが考慮されます。

建設業では、材料在庫だけでなく「工事未収金」も対象となり、現場状況や請求タイミングによって評価が上下します。買い手は“確実に回収できるかどうか”を重視するため、これらの資産には掛目が設定される傾向があります。

固定資産(市場価値との乖離)

固定資産は帳簿価額と市場価値が大きく乖離している可能性があります。たとえば、重機や車両などは購入時は高額でも、減価償却後の価値は市場で大きく下がることが一般的です。

この場合、帳簿上の金額をそのまま資産価値として評価することが適切でないため、掛目により調整されることがあります。

のれん・無形資産(実態価値の不透明さ)

のれんや無形資産(特許、商標、ブランド価値など)は、将来の収益性に依存して評価されるため、実態価値が不透明になりがちです。そのため買い手側は保守的に判断し、掛目を設定して帳簿価額よりも低く評価するケースが一般的です。

建設業では「工事未収金」や「仮勘定」も対象に

建設業特有の科目として、以下のような項目にも掛目が適用されやすいです。

これらの資産は金額が大きいことも多く、掛目によって企業価値が大きく変動する要因となります。

掛目が企業価値に与える影響

資産の評価減によって純資産額が圧縮される

掛目が適用されると、帳簿上の資産がそのまま評価されないため、純資産額(Net Asset Value)が減少します。純資産額が下がれば、当然ながら企業価値にも直接影響します。

とくに建設業のように売掛金や工事関連の未収資産が多い業態では、掛目の影響は無視できません。

DCF・PBRなどバリュエーション手法との関連

企業価値を評価する際に使われるDCF法(将来キャッシュフローの割引)やPBR(純資産倍率)においても、掛目は間接的に影響します。たとえば、純資産が掛目によって圧縮されれば、PBR評価は小さくなり、企業価値の算定結果も変わります。

DCFでは直接掛目を使うわけではありませんが、運転資金や棚卸資産の調整によって評価が修正されます。

買い手視点では“保守的評価”が基本方針

買い手は、M&Aに伴うリスクを最小限に抑えるために掛目を設けます。特に中小企業M&Aでは、財務資料の整備度合いや内部管理体制によって実態が左右されやすいため、判断に慎重さが求められます。

そのため買い手は、帳簿上の金額をそのまま信用するのではなく、「確実に価値がある部分だけを評価する」という姿勢で企業価値を算定します。

掛目を小さくするための対策とは?

財務資料の整備・精査

掛目を最小限に抑えるには、まず財務資料の整備が不可欠です。特に以下のような対応が効果的です。

これらの作業により、買い手が抱く不透明感を減らし、掛目を小さくすることが期待できます。

実務上の交渉ポイント

掛目は買い手が提示する調整ですが、交渉次第で変更できる場合もあります。以下のポイントを押さえておくと効果的です。

根拠となる資料がしっかりしていれば、買い手側の懸念を取り除くことができ、掛目を下げられる可能性があります。

専門家による事前デューデリジェンスの実施

事前に第三者の専門家によるデューデリジェンスを行うことで、掛目の対象となりやすい項目を把握し、対策を講じることができます。建設業に精通した専門家であれば、工事進行基準や現場管理の実態なども適切に評価し、改善点を洗い出してくれます。

売り手としては、“どの資産に掛目が入る可能性があるのか”を把握しておくことで、買い手との交渉を優位に進めることができます。

まとめ

掛目とは、買い手がリスクや不確実性を反映するために、帳簿上の資産価値を調整する考え方です。売掛金・在庫・固定資産・無形資産のほか、建設業では工事関連の未収資産にも適用されることが多く、企業価値に与える影響は小さくありません。

適切な資料整備や説明を行うことで掛目を最小限に抑えることができ、事業承継や売却価格を守るうえで非常に重要なポイントとなります。建設業のオーナーであれば、掛目の仕組みを理解し、事前準備を徹底しておくことが成功への近道です。

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※1参照元:M&Aフォース(https://www.ma-force.co.jp/consultant/
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