工事未収金とは

目次

建設業の決算書には一般の業種では見慣れない「工事未収金」という勘定科目が登場します。これは売上は計上しているものの、まだ入金されていない重要な債権であり、M&Aの場面では買い手が必ずチェックするポイントです。ここでは、工事未収金の基礎から、建設業M&Aにおける評価のされ方と注意点を解説します。

工事未収金とは?建設業特有の債権項目

工事未収金とは、すでに工事が完成し引き渡しも済んでおり、請求も行っているにもかかわらず、まだ入金されていない売掛金を指します。通常の「売掛金」と同じく債権ではありますが、工事ごとに金額が大きく、工期が長くなる建設業では、工事未収金として別建てで管理されることが多くなります。

また、建設業の売上計上には「完成基準」と「進行基準」という考え方があり、どちらを採用しているかで工事未収金の発生タイミングが変わります。完成基準では、工事が完了し引渡した時点で全額を売上計上するため、その時点で請求済み・未入金であれば工事未収金が計上されます。一方、進行基準では、工事の進捗に応じて売上を按分計上するため、部分的な完成や出来高に応じた工事未収金が積み上がっていくイメージです。いずれにせよ、工事未収金は「売上高の裏付けとなる債権」であり、買い手はその中身に強い関心を持ちます

なぜ工事未収金がM&Aで重要視されるのか?

工事未収金がM&Aで重要視される最大の理由は、実際に回収できるかどうかによって、資産価値が大きく変わるからです。帳簿上は同じ金額であっても、「ほぼ確実に支払われる債権」と「支払いが滞りがちで回収に不安がある債権」では、買い手の評価が変わって当然です。

そのため、買い手は工事未収金の金額だけでなく、請求先(元請け・施主・自治体など)の信用状態、契約書や注文書の有無、過去の支払い遅延履歴などを細かくチェックします。こうした確認作業は、DD(デューデリジェンス)の過程で詳細に行われ、「本当にお金として回収できるのか」「いつ入金されるのか」が検証されます。工事未収金が多い会社ほど、M&Aでは慎重に見られる傾向があります。

工事未収金が買収価格に与える影響

M&Aでは、工事未収金をそのまま100%の価値で評価せず、一定の割合(掛目)をかけて評価するケースが一般的です。例えば、「工事未収金の80%を評価対象とする」といったイメージで、回収不能リスクを織り込んだ形で買収価格が決まることがあります。掛目の設定は、過去の回収実績や取引先の信用力によって変動します。

工事未収金の残高が過大である場合、買い手は「実態以上に売上を膨らませているのではないか」「将来のキャッシュフローを圧迫するのではないか」と懸念し、投資判断が慎重になることもあります。また、回収不能となるおそれがある未収金については、価格調整や表明保証の条項で取り扱われることも少なくありません。特定の債権については、回収できなかった場合に売り手が一定割合を負担するといった取り決めが行われるケースもあります。

工事未収金を正しく評価・提示するために

売り手側としては、工事未収金を正しく評価してもらうために、証憑資料を整えておくことが欠かせません。具体的には、工事台帳(契約金額・出来高・請求状況など)、請求書、契約書・注文書、検収書・完成報告書などを揃え、「なぜこの金額の未収金が発生しているのか」を説明できる状態にしておく必要があります。

併せて、入金予定日を明確に管理し、必要に応じて取引先に支払意向を確認しておくことも重要です。売却前の段階で、長期間滞留している未収金については回収交渉を進める、回収困難なものは評価から外すなど、与信管理と滞留債権の整理を事前に行っておくことで、M&A時の印象を良くすることができます。結果として、買収価格の下振れを抑えることにもつながります。

よくあるトラブルと対策

工事未収金に関するトラブルで多いのが、「未収金の存在を買い手に正確に説明していなかった」というケースです。金額自体は計上されていても、回収可能性や滞留の理由を共有していないと、クロージング後に「聞いていた話と違う」と認識のズレが生じるおそれがあります。特に回収に時間がかかっている案件については、経緯や見込みを丁寧に説明することが大切です。

また、「入金見込みがない請求を過大評価していた」「過去に工事完了報告が出ていない請求が紛れ込んでいた」といった問題も見受けられます。これらは、内部での請求処理や完工管理が不十分な場合に起こりがちです。対策としては、工事ごとの完了状況と請求状況を突き合わせる定期的なチェックを行うこと、与信が不安な取引先への請求は慎重に管理することが挙げられます。M&Aを見据えるなら、数年前からこうした管理体制を整えておくと安心です。

まとめ

工事未収金は、建設業ならではの会計項目であり、M&Aの際には必ず精査される重要な債権です。金額だけでなく、その回収可能性や裏付けとなる証憑が問われるため、事前に資料を整理し、リスクの少ない債権として見せる工夫が欠かせません。評価を不必要に下げないためには、専門家の助言も受けながら透明性の高い管理を行うことが有効です。早めに準備を進めておくことで、建設業M&Aにおける交渉をスムーズに進めやすくなります。

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※1参照元:M&Aフォース(https://www.ma-force.co.jp/consultant/
※2参照元:Career Ladder(https://careerladder.jp/blog/ranking/
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