建設会社の売却

目次

「後継者がいないまま数年が過ぎ、そろそろ会社の未来をどうするか本気で考えなければならない」 そう感じている建設業経営者は少なくありません。

2020年以降、従業員や取引先との関係を守りながら、納得のいく形で会社を売却するという選択肢を取る経営者が増えています。

本記事では、売却を検討するうえで欠かせない準備や進め方を、具体的にご紹介します。

建設会社を売却するという
選択肢とは?

建設会社を売却するという選択肢は、事業承継や経営資源の再編において現実的な手段のひとつです。特に後継者不在や業績安定による“売りどき”を逃したくない経営者から注目されています。

建設業界で増える
「会社売却」という出口戦略

2020年以降、M&Aを活用した第三者承継が一般化し、建設業界でも地方・中堅企業を中心に売却の動きが広がっています。

この背景には、若手入職者の減少や有資格者の確保難という人材面の課題があります。

特に公共工事への入札では一定数の資格者常駐が求められ、自社だけで必要な技術者を育成するには時間とコストがかかるため、短期間で即戦力を確保できる買収が合理的と判断されるケースが増えているのです。

さらに、建設DXやインフラ更新プロジェクトが活発化する中、既存の施工ノウハウや技術を持つ会社は市場価値が高まっています。こうした企業は買い手から評価されやすく、高値での売却が期待できるため、「いまが売りどき」と考える経営者が多いのです。

売却と廃業の違い、選ばれる理由

廃業では従業員の解雇や契約解除などの処理が必要となる一方、売却では雇用や取引を維持しつつ、経営者が引退や転身を図ることが可能です。

事業の継続性が保たれることで、従業員や顧客、協力業者への影響を最小限に抑えることができます。また、売却益が得られる点も大きな違いです。

廃業では多くの場合、資産処分による清算で終わりますが、売却ならば企業の“のれん”や人的資産にも価値がつき、経営者の個人資産形成にもつながります。

どんな建設会社にニーズがあるのか?

建設会社を買収する企業は、有資格者が在籍し、豊富な実績を持つ施工力のある会社を重視します。

例えば1級土木・建築施工管理技士が在籍している、地域の官公庁案件を定期的に受注している、顧客との継続契約がある、などは大きな強みです。

さらに、地域の評判や取引先との関係性も重視されます。地域密着型で信頼を築いてきた中小建設会社は、拠点強化や新エリア進出を目指す企業にとって魅力的な存在です。

また、2020年の制度改正以降は建設業許可の承継制度も整備されており、許可や経営事項審査点数を持つ企業は、より高く評価される傾向にあります。

売却に向けた準備と進め方

建設会社の売却は準備がすべてといっても過言ではありません。適切な整理と情報開示が、スムーズな交渉と納得のいく条件につながります。

売却前に整理すべきポイント

建設会社の売却においては、譲受企業が「自社の何に価値を見出すか」を明確に伝える準備が重要です。

財務情報、保有資格、人員体制、工事実績、契約関係など、経営資源のすべてを棚卸しし、定量・定性の両面から可視化しましょう。

売却に際して必要な書類や管理台帳を整備し、資料間で情報の整合性を保つことで、信頼性が高まり、譲渡条件の交渉も優位に進めやすくなります。

また、属人的な業務がある場合は業務フローを明文化し、引き継ぎのしやすさを示すことも譲受企業からの評価を高めるポイントです。

会社情報と許認可の整備

財務資料

決算書3期分、月次試算表、キャッシュフロー、財務諸表の注記、借入金の明細、資産の評価方法、粉飾や役員貸付の有無などを整理します。税理士や会計士と連携して資料を整えることで、数字の信頼性が高まり、譲受企業からの信頼を得やすくなります。

契約関係

売上構成の多くを占める主要顧客との契約内容、継続性の高い工事請負契約、外注・リース契約、取引条件書などは網羅的に洗い出し、スキャン保存なども含めて一覧管理します。譲渡に制限がある契約は、交渉前に対応方針を検討しておくことが重要です。

資格状況

建設業許可(業種・一般/特定)、経営事項審査(経審)の結果、有資格者(1級施工管理技士等)の人数・年齢・経験年数、入札参加資格の有無などは、企業価値の評価に直結します。これらを表形式で一覧にまとめると、譲受企業の理解が深まりやすくなります。

継続的な案件の有無と将来性

譲受企業が最も重視するのは、売却後の売上がどの程度確保されているか、そしてその継続性と将来性です。

例えば、定期契約や複数年契約の有無サブコンとしての立場ゼネコンや官公庁との長期的な取引関係などは、安心材料として高く評価されます。

また、現在の受注残将来の入札予定見込顧客からの打診状況など、将来の売上が期待できる材料は積極的に開示しましょう。

一方で、売上が特定顧客に依存している場合は、契約更新リスクや競合状況などを整理し、リスクの所在と対応策を明示しておくことが望まれます。

売上の継続性と分散度、そしてそれを支える営業基盤の強さが、譲受企業の判断に直結します。

会社の価値を高めるには?

企業価値を高めるには、単なる利益水準だけでなく、譲受企業が引き継ぎやすい状態将来の成長ポテンシャルが揃っていることが重要です。

例えば、社内業務の標準化・マニュアル化、各部門の責任と権限の明確化、ERPや勤怠・会計ソフトなどのシステム導入状況は、スムーズな引継ぎを後押しします。

また、資格取得支援や職長育成、若手採用の実績などは、中長期的な成長を感じさせるポイントです。

加えて、CCUS(建設キャリアアップシステム)への対応やSDGsを意識したCSR活動など、社会的価値を重視する動きも企業評価に影響します。

経営者が不在でも機能する“仕組みのある組織”は、譲受企業からも安定性や将来性の観点で高く評価されやすい特徴です。

譲受企業から見た評価ポイント

譲受企業は、数字上の実績だけでなく、現場や組織の実態にも深く目を向けています。特に買収後に安定的な運営が可能かどうかという視点から、以下のような観点で自社を評価しているのが特徴です。

自社の「見せ方」とブランディング

譲渡先から信頼されるには、会社の中身だけでなく“外からどう見えるか”も重要です。

Webサイトや会社案内、採用ページ、代表者挨拶には一貫性を持たせ、閲覧しやすく整理しておきましょう。

見た目だけでなく、企業文化価値観が伝わることが大切です。施工実績写真や社員紹介、資格者インタビューなどを掲載することで、社内の雰囲気や現場力を具体的に伝えられます。

また、SNSや動画、パンフレットPDFの活用なども含め、オンライン・オフライン問わず発信力を高めることで、譲受企業に対する安心感と信頼感の醸成につながります。

売却の方法と流れ(M&Aの基礎)

建設会社の売却にはいくつかのスキームがあります。ここでは主な進行ステップと注意点を紹介します。

仲介業者を使う/使わないパターン

仲介業者を利用することで、譲受企業の選定から交渉、契約書作成、スケジュール調整まで一括して支援を受けられます。

特に建設業界に精通したM&A仲介会社であれば、建設業許可や経審、工事契約の特殊性にも対応でき、トラブルリスクを抑えやすくなります。

一方、自力で進める場合は手数料を抑えられる反面、法務や条件交渉のハードルが高くなります。会社の規模や交渉経験の有無によって、適切な選択を検討することが大切です。

売却のステップ

建設会社の売却には、段階的なステップ専門家の支援が欠かせません。スムーズな譲渡を実現するためには、各プロセスの目的と注意点を理解しておくことが重要です。

以下は一般的な売却の流れであり、規模や条件によって若干異なる場合もありますが、基本的にはこの5段階を踏んで進めます。

1. 専門家への相談と秘密保持契約:まずはM&Aに詳しい専門家へ相談し、会社情報の取り扱いについて秘密保持契約(NDA)を締結します。初期段階では、自社の売却可能性や進め方について方向性を整理します。

2. 企業概要書の作成と譲受企業候補の選定:財務情報や事業内容、自社の強みなどを整理した企業概要書(IM)を作成し、譲受企業候補をリストアップしていきます。

3. 基本合意書の締結:譲渡価格の目安、雇用の継続方針、譲渡時期などに合意した段階で基本合意書を締結します。なお、この時点では法的拘束力は限定的です。

4. デューデリジェンス(詳細調査):譲受企業が財務・法務・人事・契約などの詳細調査を行います。リスクが見つかれば条件見直しの要因にもなるため、情報整理と正確性が求められます。

5. 最終契約書締結・クロージング:デューデリジェンスの結果をもとに最終的な条件を確定させ、契約書を締結します。譲渡対価の受け取りや登記、各種引き継ぎを経て正式に売却が完了します。

契約で注意すべきポイント

契約段階では、譲渡価格の算出根拠や調整条項の設定に加え、従業員の雇用継続条件を明確にすることが重要です。

例えば、譲渡価格に退職金や簿外債務の調整が含まれる場合は、別紙で内訳を明示します。

また、従業員の雇用継続を譲受企業に義務づけるかどうかは、トラブル防止の観点からも合意文言として明文化すべきです。

さらに、競業避止義務の範囲や期間、建設業許可の引き継ぎや再取得責任の所在も含め、曖昧さを避けて契約書に正確に記載することが求められます。

売却成功事例と失敗事例から学ぶ

ここでは、実際の建設会社売却事例を紹介し、成功の背景や回避すべき失敗例から学びを得ます。

地方中小建設業の成功ストーリー

北陸地方の郊外で長年地域密着型の事業を展開していた建設会社。

年間売上は約2億円、借入金は1億円超と財務状況は厳しいものの、1級土木施工管理技士の在籍公共工事への入札実績地域住民や発注者との信頼関係などが評価されました。

買収したのは、東北地方の中堅ゼネコン。その企業は地元自治体の案件参入を狙っており、入札資格の取得や拠点展開の足がかりとして、この建設会社を選定しました。

結果として、従業員の雇用は維持され、借入金は譲受企業が引き継ぐかたちでM&Aが成立。

企業の規模や負債にかかわらず、強みが明確であれば買い手のニーズと合致し、売却は十分に可能であることを示す事例です。

参照元:アドバンストアイ公式HP(https://www.advi.co.jp/column/detail48/

よくあるトラブルとその回避方法

建設会社の売却においては、思わぬトラブルが成立直前で発生するケースも少なくありません。

例えば、経営管理責任者が売却直前に退職したことで公共工事の入札資格を失ってしまった事例や、進行中の請負契約にチェンジオブコントロール条項(契約当事者の変更には発注者の承諾が必要)が含まれており、承諾取得に時間を要してスケジュールに影響した例もあります。

また、建設業許可の承継制度を理解しておらず、譲受企業が改めて許可取得の手続きに追われ、売却後の業務開始が遅れたケースもあります。

これらのトラブルは、事前の社内整理契約書の確認、M&Aに強い専門家の支援を受けることで、十分に回避・対応可能です。

参照元:FPメディア「建設業でM&Aを成功させるための注意点と事例」(https://f-p.jp/media/article/construction-industry-ma/

譲渡企業側の視点も紹介

譲渡企業にとっては「資格者確保」「地域基盤の取得」「成長市場への参入」などがM&Aの動機です。

例えば京王建設がNB建設を買収した例では、技術力商圏の取得が主目的でした。

参照元:日本M&Aセンター公式HP(https://www.nihon-ma.co.jp/news/20230323_1-1033/

税金・法務・手続きの
チェックポイント

建設会社の売却では、税務処理や法的な契約手続き、許認可の承継など多岐にわたる確認事項があります。

売却のスムーズな実行とトラブル回避のために、あらかじめ押さえておきたい実務上の重要ポイントを項目別に整理して解説します。

譲渡益にかかる税金とは

建設会社を売却すると、得られた利益に対して税金が発生します。株式譲渡では譲渡益課税(約20%)、事業譲渡では法人税消費税の対象となるため、選択するスキームによって手取り額に大きな差が出る可能性があります。

また、役員退職金の支給時期や資産の評価方法など、税務上の調整ポイントも多く、知らずに進めると不要な課税リスクを抱えることもあります。

売却金額だけに注目せず、税引き後の手取りを最大化するためには、税理士との早期連携が欠かせません。事前に相談しておけば、会社と自身の将来設計に沿った選択がしやすくなります。

建設業許可の名義変更

通常、事業譲渡では建設業許可の“名義変更”はできず、譲受企業が新たに許可を取り直す必要があります。

ただし、2020年に制度改正が行われ、「建設業の事業承継に関する認可制度」が創設されました。この制度を活用すれば、一定の条件下で許可の承継(実質的な名義引き継ぎ)が可能になります。

例えば、譲受企業が事前に国や都道府県に承継認可を申請し、許可基準を満たしていれば、売却と同時に許可も引き継ぐことができます。手続きには事前相談と余裕をもった申請が推奨されます。

役員・従業員の対応方針

売却時には、従業員の雇用継続や処遇の見直しに加え、役員(特にオーナー社長)の退任・再任方針についても整理が必要です。

株式譲渡の場合、従業員の雇用契約は原則そのまま引き継がれますが、役員は譲渡後に退任するケースが多く、退職金の支払いや引き継ぎ体制の構築が求められます。

一方、事業譲渡では従業員一人ひとりと新たに雇用契約を結ぶ必要があり、処遇の変更や条件提示でトラブルが起きやすいため、事前説明と同意の取得が不可欠です。

特に労働条件通知書や就業規則の改定も含めた準備を行っておくと、譲受企業との交渉もスムーズになります。

まとめ

建設会社の売却は、後継者不在や人材不足といった課題を解決し、会社と社員の将来を守るための有効な選択肢です。

>正しい準備信頼できる専門家の支援を受けることで、納得のいく売却が実現できます。

今こそ、会社の未来を見据えた選択を検討してみてはいかがでしょうか。

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