建設業のM&Aでは、契約や許認可、人材承継など業界特有の要素が多く、信頼できるM&A仲介会社の選定が成功の分かれ道となります。本記事では、M&A仲介会社(以下、仲介会社)の役割や選ぶときにチェックするべきポイント、よくある失敗と注意点を紹介します。
建設業界では経営者の高齢化や人材不足が深刻化し、後継者不在による事業承継問題が広がっています。M&Aベストパートナーズによると、建設業界のM&A件数は2020年に国内同士で154件と、2000年以降で最多を記録しました。
M&Aの動機は多様化しており、単なる承継対策にとどまらず、都市圏・地方への進出、異業種からの参入、技術力の獲得など、積極的な成長戦略としても活用されています。
建設業のM&Aでは、現場ごとの契約や許認可、職人の継続雇用など、業界特有の事情をふまえた対応が不可欠です。
そのため、M&Aの仲介会社は単なる「企業の紹介役」ではなく、譲渡企業と譲受企業の双方にとって、交渉・調整・契約・統合までを支援するパートナーとして重要な役割を担います。
主な役割は以下の5つです。
建設業特有の工法や施工体制、保有許認可、地域性などを踏まえ、譲渡企業と譲受企業の条件に合致する相手先を選定します。
譲渡価格や雇用条件、経営方針に関する交渉を支援します。特に中小規模では、経営者や従業員の意向を尊重した交渉設計が不可欠です。
未完成工事、瑕疵担保、下請契約など建設業特有のリスクを精査。財務・法務だけでなく、工事進捗や契約責任の所在もチェックします。
株式譲渡・事業譲渡・合併などM&Aの目的や状況に応じた適切な手法を構築。税務・法務の観点から税理士などの専門家とも連携し、実行可能な契約スキームを設計します。
統合後の組織運営、人材定着、安全管理、ICT導入などをフォロー。譲受企業の戦略と譲渡企業の現場文化を橋渡しする支援が行われます。
「仲介会社」と「FA(フィナンシャルアドバイザー)」は、M&A支援における立場と役割が異なります。
譲渡企業と譲受企業の双方を担当し、マッチングから条件調整、クロージング(成約手続きの完了)まで一貫して支援する中立的な立場です。
譲渡企業または譲受企業のどちらか一方に専任し、企業価値算定や交渉アドバイス、スキーム設計などの助言業務を担うアドバイザリー型の立場です。
建設業におけるM&Aを成功させるためには、パートナー選びが重要です。
以下では、チェックすべきポイントを5つ紹介します。
業界に特化した実績の有無は、仲介会社を評価するうえで基本となる指標です。
具体的には、成約件数や成約規模(譲渡金額帯)、対象企業の業態(木造工務店、土木業、設備工事業など)などが公開されているかが判断材料になります。
「どの地域で何件の実績があるか」「どの規模・事業領域に強みを持つか」など、数字と属性が併記されている場合は、比較検討もしやすくなります。
M&A仲介では報酬体系が各社で異なるため、あらかじめ費用が明示されているかどうかは極めて重要です。
着手金、中間金、成功報酬(レーマン方式等)、最低報酬の設定有無など、各項目の金額と算定基準が公開されているかを確認する必要があります。
特に中小規模の建設業では予算に限りがあることも多いため、「完全成功報酬」「着手金無料」など、初期コストを抑えたプランになっているかも判断のポイントになります。
建設業特有の事情(工法、契約慣行、検査基準、許認可制度など)を理解していない仲介会社では、適切な支援が望めない可能性もあります。専門チームの存在や、実務経験を持つアドバイザーが在籍しているかも、確認することをおすすめします。
マッチングだけでなく、どこまでを対応してくれるかは、仲介会社の総合力を見極めるポイントです。以下サポートも含まれるか確認しましょう。
加えて、税理士など各専門家と連携し、税務・法務面での実務も踏まえた提案ができるかも重要です。
建設業界では、地方・中小規模の事業者も多く存在します。小規模案件や、地方案件の支援体制、成約実績があるかどうかをチェックすると自社に適した仲介会社を選びやすくなります。
業界横断型で、建設業界特有の事情(工期遅延、未完成工事、下請契約の不備など)に慣れていない仲介会社を選んでしまうと、候補企業を調べる段階で重大なリスクを見落とす恐れがあります。
着手金無料や成功報酬特化など、初期費用の低さを過度に強調する仲介会社では、社内リソースが限られ、交渉支援や事前調査などが十分に機能しない可能性も。
例えば、「費用は抑えられるが、専任担当がつかない」「クロージング(成約手続きの完了)まで継続的に支援されない」といった問題が生じる可能性もあります。
売り手と買い手でM&Aに求める条件が異なる場合(価格重視とシナジー重視など)、初期段階で詳細なヒアリングと条件整理ができていないと、交渉の後期で方針のズレが顕在化し、再調整に時間がかかるリスクがあります。
「想定売却価格」「譲渡範囲」「従業員の雇用条件」など、交渉初期から具体的なすり合わせを行う体制があるかは重要なポイントです。
専任契約を締結する際、最低報酬(ミニマムフィー)の金額が高額に設定されていることがあり、案件が成約に至らなかった場合でも、一定額の費用が発生するリスクがあります。
さらに、専任期間中の途中解約が制限されていると、他社への切り替えが難しく、タイミングを逸したり、追加費用が発生したりする恐れもありますので、契約前に必ず金額と条件を確認しましょう。
M&A仲介会社を選定する際には、単に実績や費用だけでなく、対応体制や契約内容なども含めて総合的に比較検討することが重要です。本記事では、信頼できる仲介会社を見極めるためのポイントを紹介します。
建設業のM&Aでは、現場実務や業界構造への理解が不可欠です。担当者が元ゼネコン出身や施工会社経験者など、建設業に関する知見を持っているかを確認しましょう。
また、初回面談やヒアリング時に、建設DXや地域公共投資動向など、業界変化を踏まえた提案ができるかどうかも、担当者の力量を測る材料になります。
建設業における過去の成約事例が、具体的に開示されているかを確認しましょう。業種(木造工務店・土木業など)、譲渡スキーム(株式・事業譲渡)、譲渡金額帯などが明示されていれば、業界特化型の実績があるかどうかを判断しやすくなります。
さらに、譲渡後の経営統合支援や人材定着支援に関する成功事例、顧客インタビューなどが掲載されている場合は、サポート品質や対応姿勢を把握するうえで参考になります。
相談先を一社に絞るのではなく、複数の仲介会社を比較したうえで選定するのが基本です。初回無料相談の有無、オンライン診断ツールや事例集ダウンロードなど、比較や情報収集をしやすい仕組みがあるかどうかを確認するとよいでしょう。
M&A仲介では、専任契約を結ぶ場合に一定期間の拘束や最低報酬(ミニマムフィー)が設定されることがあります。契約書ひな形の公開、専任期間(6か月~12か月など)、途中解約時の条件などが明示されているかを事前に確認することが重要です。
とくに成約金額にかかわらず「最低〇〇万円を支払う必要がある」といった条件が設けられていることもあるため、報酬体系や算定根拠が明確に開示されているかどうかを慎重に確認しましょう。
建設業M&Aでは、業界に精通した仲介会社を選定することが成功の鍵となります。実績、手数料体系、サポート内容、担当者の専門性や信頼性といった観点から総合的に比較しましょう。
判断に迷う場合は、無料相談や複数社への問い合わせから始めるのがおすすめです。
建設業の事業承継は誰に相談するかが重要な鍵を握ります。
企業の求める承継の形を実現してくれる相談先を目的別に紹介します。


※相談やマッチング
機能利用は無料

※1参照元:M&Aフォース(https://www.ma-force.co.jp/consultant/)
※2参照元:Career Ladder(https://careerladder.jp/blog/ranking/)
※3参照元:日本M&Aセンター(https://recruit.nihon-ma.co.jp/about-us/data-overview/)
※4参照元:日本M&Aセンター(https://www.nihon-ma.co.jp/groups/message.html)
※日本M&Aセンター費用の参照元https://www.nihon-ma.co.jp/service/fee/convey.html
※5参照元:トランビ(https://www.tranbi.com/)