建設業におけるM&Aの流れ

目次

建設業界におけるM&Aは、単なる企業売買の枠に収まらず、事業承継と会社存続の切り札として広く注目されています。経営者の高齢化が進むなかで後継者不在は深刻な課題であり、また建設需要の変動や公共工事の入札資格維持など、業界特有の事情がM&Aを難しくしています。
本記事では、建設業M&Aの「基本的な流れ」から「具体的な7つのステップ」、さらに「重要な注意点」や「スムーズに進めるコツ」までを詳しく解説します。現場を止めず、従業員・協力会社・顧客との信頼を守りながら進めるポイントを理解しましょう。

建設業におけるM&Aの基本的な流れ

M&Aの目的整理と社内準備

建設業M&Aの第一歩は「なぜM&Aを行うのか」を明確にすることです。目的が曖昧なまま進めると、買い手候補に伝えるべき情報も散漫になり、交渉が難航します。例えば、後継者不在の解消を最優先にするのか、財務基盤の安定を狙うのか、それとも成長のための戦略的M&Aなのか、目的ごとにアプローチが異なります。

社内準備としては、以下のような作業が求められます。

こうした事前整理が十分であれば、買い手は安心して評価でき、交渉もスムーズになります。

業界特有の確認事項

建設業には、他業界にはない承継上のチェックポイントがあります。特に重要なのは以下です。

これらの要件を満たさないと、承継後に公共工事が受注できず、売上に直結するリスクがあります。

事前相談・専門家との連携

M&Aは法務・財務・税務・労務など複雑な要素が絡み合います。さらに建設業特有の許可制度や契約引継ぎもあるため、M&A仲介会社・弁護士・会計士・行政書士といった専門家を早い段階から巻き込むことが不可欠です。専門家の関与により、承継認可申請の期限管理や契約リスクの洗い出し、税務面の最適化が可能となります。

実際のM&Aプロセス:7つのステップ

【STEP1】企業価値評価(バリュエーション)

財務諸表をもとに企業価値を算定しますが、建設業では通常の評価項目に加え、受注残工事や公共工事実績、技術者資格の保有状況も考慮されます。たとえば赤字工事を抱えている場合は評価が下がり、逆に公共工事比率が高く安定していれば評価は高まります。

【STEP2】ノンネーム資料(匿名概要)作成

売却企業の名前を伏せた概要資料を作り、買い手候補に提示します。売上規模や工種、許可状況、地域性などを簡潔にまとめることで、興味を持った買い手を絞り込めます。守秘性を確保しつつ魅力を伝えることが重要です。

【STEP3】買い手探しとマッチング活動

M&A仲介会社やプラットフォームを通じて候補を探します。建設業では地域性が強いため、同エリアでシナジーが見込める企業を優先するケースが多いです。また、異業種参入企業が「技術力や公共工事資格」を求めて買収を検討することもあります。

【STEP4】トップ面談と意向表明書(LOI)の提出

経営者同士が直接会い、経営理念や今後の方向性を確認します。建設業では特に「従業員雇用の継続」「協力会社との関係維持」が買い手に伝えられるかどうかが焦点になります。条件が合意に至れば、買い手から意向表明書(LOI)が提示されます。

【STEP5】デューデリジェンス(DD)

買い手による詳細調査です。建設業特有のDDでは以下が重要です。

これらの調査結果によって、最終条件が調整されます。

【STEP6】最終契約とクロージング

最終的な契約書を締結し、株式や事業を譲渡します。建設業の場合、承継認可申請や契約名義変更を同時並行で進める必要があります。怠ると許可が失効し、工事継続に支障が出るため注意が必要です。

【STEP7】PMI(統合プロセス)と事業運営の引き継ぎ

統合後は従業員・協力会社・顧客に対する説明責任が重視されます。特に現場では「雇用条件はどうなるのか」「契約は続くのか」といった不安が高まります。買い手は初期段階で従業員説明会や協力会社説明会を開催し、不安を払拭することが成功の鍵です。

建設業のM&Aで特に重要なポイント

建設業許可の承継

建設業許可は法人や個人事業主に紐づくため、事前認可申請を期限内に行うことが必須です。相続や事業譲渡では30日以内の申請が必要な場合もあり、専門家と連携して漏れなく対応することが求められます。

継続受注中の案件対応

工事が継続している最中に承継を行う場合、契約名義の変更や元請け承諾が必要です。施主や自治体に十分な説明を行い、信頼を失わないことが最重要です。

技術者や職人の引継ぎと定着策

建設業の価値は「人材」に集約されます。専任技術者や現場職人が承継後に離職してしまえば、許可要件を満たせなくなるだけでなく、工事の品質や進行に影響します。処遇改善や研修制度の導入を通じ、定着を図ることが不可欠です。

M&Aの流れをスムーズに進めるためのコツ

専門家を早期に巻き込む

承継認可や契約名義変更は専門知識が必要です。仲介会社や士業と早期に連携することで、ミスを防ぎ、手続きを円滑に進められます。

社内外の情報共有と透明性の確保

M&Aは秘密裏に進める必要がありますが、タイミングを見て従業員や協力会社に丁寧な説明を行うことが不可欠です。透明性を持った情報共有が信頼維持につながります。

秘密保持と従業員・取引先への配慮

情報が漏れれば風評リスクが高まり、工事受注や人材定着に悪影響を及ぼします。秘密保持契約を徹底しつつ、開示のタイミングは計画的に設定しましょう。

まとめ

建設業のM&Aは、一般的なM&Aプロセスに加えて建設業許可の承継・技術者の配置・現場の継続性といった業界特有の配慮が求められます。正しい流れを理解し、早期から専門家や仲介会社と連携することが、円滑で成功率の高いM&Aの実現につながります。会社と従業員、そして地域のインフラを守るために、計画的かつ丁寧に進めましょう。

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※1参照元:M&Aフォース(https://www.ma-force.co.jp/consultant/
※2参照元:Career Ladder(https://careerladder.jp/blog/ranking/
※3参照元:日本M&Aセンター(https://recruit.nihon-ma.co.jp/about-us/data-overview/
※4参照元:日本M&Aセンター(https://www.nihon-ma.co.jp/groups/message.html
※日本M&Aセンター費用の参照元https://www.nihon-ma.co.jp/service/fee/convey.html
※5参照元:トランビ(https://www.tranbi.com/