建設業の高齢化対策

目次

建設業では、職人や経営者の高齢化が急速に進み、技能継承や事業承継の問題が顕在化しています。

若手人材の定着やシニア・外国人の活用、M&Aによる世代交代など、構造的な対策が求められる中、本記事では課題の実態と対応策を多角的に解説します。

建設業界の高齢化がもたらす
現実とは?

建設業界では現場の職人や技術者に加え、経営者層の高齢化も深刻化しています。技能の承継が進まず、後継者不在や許可要件の維持困難といった課題が、事業継続に大きな影を落としています。

現場技術者の平均年齢は50歳超
(国交省調査など)

国土交通省の調査によると、2023年時点で建設業従事者のうち55歳以上の割合は約35.5%、29歳以下はわずか12.0%です。

特に土木や基礎工事といった重作業では高齢者比率が高く、数年後には現場が成り立たない可能性も指摘されています。

若手の入職数が少ない現状では、高齢層の引退に伴って現場技能の継続が危ぶまれ、地域工事の担い手不足も加速

現場力の維持には、若手の確保とあわせて教育・育成体制をいち早く整える必要があります。

参照元:(PDF)国土交通省「最近の建設業を巡る状況について」(https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001493958.pdf

経営者の6割以上が60歳超という実態

東京商工リサーチの調査によれば、2024年時点で建設業の経営者の平均年齢は63.68歳と高水準で、後継者不在による倒産も深刻化しています。

同年には「後継者難」倒産が全体で462件にのぼり、建設業では前年比6.0%増の105件と過去最多を記録しました。

小規模企業を中心に、代表者の高齢化と承継準備の遅れが事業継続の大きな壁となっており、“黒字廃業”リスクの増大。

属人化した経営や建設業許可の要件も障壁となりやすく、早期から承継体制を構築する必要があります。

参照元:東京商工リサーチ「2024年の『後継者難』倒産 過去最多の462件」(https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1200868_1527.html

若手不足により「技術空洞化」が加速

熟練職人の高齢化により、現場技能が十分に継承されない“技術空洞化”が全国的に進行しています。

左官や型枠、配管などは職人の手作業に依存する部分が多く、図面やマニュアルだけでは再現が難しい技能が多数

若手の定着率が低いなか、属人的な技術が消えつつある現場も増えており、品質や施工効率にも影響を及ぼしています。企業単位での技能継承スキームの構築が急がれます。

高齢化がもたらす現場・経営リスクの
顕在化

建設業における高齢化は、現場の安全性や作業効率、法的な許可要件の維持にまで影響を及ぼしています。以下に主なリスクを整理します。

高齢化による事故リスク

高齢従業員の割合が高まることで、現場における転倒・誤操作といったヒューマンエラーの発生率が上昇します。視力や判断力の低下により危険察知が遅れるケースもあり、軽微な事故が大きな労災に発展する可能性もあります。

業務効率の低下

体力や作業スピードの衰えにより、工程の遅延や生産性の低下が見られる現場が増えています。特に人員が限られる小規模現場では、高齢労働者に依存することで作業分担の偏りも発生しやすくなります。

許可要件未達の懸念

建設業許可の更新には、経営業務管理責任者や専任技術者の在籍が不可欠です。これらの資格者が退任・引退した際、後任を確保できずに許可が更新できないケースが増加しています。事前の人材確保と体制の見直しが求められています。

地方の中小建設業ほど影響が深刻

特に地方の中小建設業では、人口減少に伴う人材不足が深刻化しています。後継者不在により地元業者が廃業し、自治体発注工事の担い手が確保できない状況も生じています。除雪や災害対応といった地域のインフラ維持を支える工務店が失われることで、住民生活への影響も拡大。地域経済を下支えする存在として、地場建設業の再編や支援策の必要性が高まっています。

高齢化の背景と建設業特有の課題

高齢化は日本社会全体が抱える共通の課題ですが、建設業界では人材構造や職場環境、教育体制の特異性により、その進行がとくに顕著です。以下では、業界特有の課題を整理し、高齢化が進む背景を明らかにします。

長時間労働・3Kイメージ

建設業界では慢性的な人手不足により、少数の作業員が長時間労働を強いられる現場が少なくありません。

屋外作業や高所作業、重量物の取り扱いなど身体的負担の大きさもあり、職場環境は「きつい・汚い・危険」という3Kイメージを固定化しています。この印象が若年層の敬遠を招き、人材確保と定着の双方に悪影響を及ぼしています。

職場の安全性や働きやすさを見直し、労働環境の改善に取り組まなければ、業界の将来は不透明と言わざるを得ません。

業界のDX化の遅れと若手離れ

建設業ではいまだに紙図面やFAXなどアナログな業務が主流で、DXの導入が進んでいない企業が多数です。

特に中小企業ではICTやクラウド導入への投資が進まず、現場間での情報共有にもバラつきが見られます。

こうした非効率な業務体制は、デジタル環境に慣れた若手世代にとって魅力に乏しく、入職を敬遠する要因の一つです。職場のデジタル化は、単なる効率化にとどまらず、人材の確保と定着に向けた重要な取り組みといえます。

資格制度・技術承継が属人的

建設業では、必要とされる多くの資格や技能がベテラン職人の現場経験とOJTに依存しており、体系的な教育制度が整っていない企業も少なくありません。

特に中小企業では人材の層が薄く、熟練者の退職がそのまま技術力の喪失につながる“技能空洞化”のリスクを抱えています。

また、資格取得や継続学習も現場任せになりがちで、若手が成長を実感しにくい点も課題です。

映像教材やマニュアルの整備、育成担当の配置、キャリアパスの明確化など、属人化を防ぐ体制づくりが重要です。

地方ほど深刻な後継者不在・
技能継承難

地方の建設業では、都市部以上に若者の流出と高齢化が進行しており、親族や従業員に後継者がいない企業の廃業が相次いでいます

技能を引き継ぐ職人も育ちにくく、地域の公共工事やインフラ維持を担う地場業者の減少が深刻化しています。

特に除雪や補修、災害対応といった日常に直結する業務が滞ると、地域全体の生活安全にも直結

後継者の育成と承継支援は、地域社会を守るための重要なインフラ対策の一つといえるでしょう。

高齢化に対応する建設業の具体的な対策

建設業界では高齢化が進む中で、現場の技能伝承と経営体制の維持という両面から対応が迫られています。持続可能な事業運営を実現するためには、人材育成・技術継承・組織体制の強化といった具体策が欠かせません。

技能を継承する仕組みとしての
「見える化」とデジタル活用

ベテラン職人の技能を
マニュアル・動画で記録

現場で熟練職人が実際に作業を行う様子を工程ごとに撮影し、その映像を基に解説ナレーションを加えて動画コンテンツを作成します。

動画から抽出した主要なポイントは、文章や図解を用いたテキストマニュアルとして整理。作業手順や判断基準の明確化を図るものです。

完成した動画とマニュアルは社内のクラウド共有システムにアップロードされており、若手技術者が必要に応じていつでも閲覧・検索できる環境が整っています。

研修時には、OJT担当者がこれらの教材を活用しながら実技指導を実施。教育の標準化と効率化につながる取り組みといえるでしょう。

ICT建機・ドローン・BIM等の
導入による効率化

建設業における技術導入は、現場の効率化だけでなく、技能の標準化継承にも貢献しています。現場の効率化と技能継承の両立を図るうえで、次のような技術の導入が効果的です。

こうしたデジタル技術は、単なる省力化手段にとどまらず、建設現場の高度化・知識伝承を支える重要な基盤として機能しています。

若手人材を育て、定着させるための
可視化と環境づくり

建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用

建設キャリアアップシステム(CCUS)は、技能者の資格・経験・就業履歴をデータ化し、スキルを「見える化」する制度です。企業は適切な人材配置や能力評価ができ、若手への技術継承もスムーズになります。

企業にとっては、スキルや経験に応じた人材配置や、客観的な能力評価が可能となり、ベテランから若手への円滑な引き継ぎにも役立ちます。技能者本人にとっても、自身の成長やキャリアの進展を可視化できるため、働きがいやモチベーションの向上につながります。

特に若手層にとっては、努力や実績が正当に評価される仕組みがあることで、長期的なキャリアを描きやすくなり、離職防止や人材の定着にも効果が期待されます。高齢化による技術継承の課題に対し、CCUSは制度面から現場を支える有効な対策といえるでしょう。

資格取得を支援し働きやすい
環境を整える人材育成の取り組み

若手人材の成長支援には、計画的な研修や資格取得の支援が欠かせません。

受験費用や講習参加への補助を行う企業も増えており、自社で育てる意識が求められています。

また、長時間労働の是正や週休2日制の導入、福利厚生の充実といった職場環境の改善も重要です。

「ここで働き続けたい」と感じられる職場環境を整えることが、定着支援を成功させるための重要な要素です。

シニア人材を活かす
柔軟な役割設計と働き方の工夫

シニア技術者を指導役として再雇用

現場作業からは引退しても、教育担当技能指導員として活躍するベテラン職人の再雇用が進んでいます。若手社員に対して、図面やマニュアルでは伝えきれない「勘どころ」を直接伝えることができ、現場力の底上げにもつながります。

また、本人にとっても長年の経験を活かせる役割があることは、社会的な役割意識や働きがいにつながり、企業・シニア双方にメリットのある制度設計です。

短時間勤務・柔軟な働き方制度の導入

高齢従業員の中には、体力的な理由からフルタイム勤務を望まない人も少なくありません。そこで注目されているのが、週数日だけの勤務や、特定プロジェクトに限定したスポット雇用など柔軟な就労形態です。

こうした制度を整えることで、高齢者が無理なく貢献できる場を提供でき、企業側も長年の経験をもつ戦力を安定的に確保できます。

特に中小建設業においては、急な人員補充や現場指導において即戦力となるケースも多く、有効な人材戦略の一つです。

即戦力となる外国人材の活用と
受け入れ体制の整備

国際人材による補完と
リスク管理のポイント

特定技能制度では、建設現場で必要とされる技能と日本語能力を備えた外国人材を直接雇用することが可能です。特に若年層の補完や人材の定着に課題を抱える企業にとって、計画的な採用は人手不足の解消と生産性の維持に大きく寄与します。

一方で、雇用の前提としては直接雇用が義務付けられており、労働条件の整備や生活支援体制の構築が求められます。受け入れ後の定期的な面談や、母国語に対応したマニュアルの整備、相談窓口の設置など、丁寧なフォローが人材の定着と安全な職場環境の実現に不可欠です。

これらの環境が整えば、文化や言語の壁を乗り越え、外国人材が現場の中心的な担い手として活躍することも十分に可能です。技能・多様性・安定雇用の三拍子が揃った体制は、将来的な建設業の持続性を支える鍵となります。

高齢化の構造対策:
事業承継・M&Aによる世代交代

人材不足の解消と並行して、経営者の高齢化に伴う「事業そのものの承継」も建設業界の重要課題です。

従来の親族内承継に加え、従業員承継やM&Aといった多様な手段を活用し、世代交代を戦略的に進める必要があります。

黒字でも廃業を迫られる現実と、
M&Aという解決策

建設業では、経営者の高齢化と後継者不在により、黒字経営であっても廃業を余儀なくされるケースが増えています。

東京商工リサーチの調査によると、2024年の建設業における「後継者難」倒産は過去最多を記録し、事業承継の遅れが企業の存続リスクに直結していることが明らかになりました。

このような事業継続の危機に対し、2020年代以降はM&Aを通じて第三者に経営を託す選択が注目を集めています。

M&Aは単なる売却手段ではなく、社員の雇用維持や地域インフラの安定にも寄与する承継モデルとして、建設業界における新たな世代交代の手段となりつつあります。

参照元:東京商工リサーチ「2024年の『後継者難』倒産 過去最多の462件」(https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1200868_1527.html

親族内・従業員承継の選択肢と
そのハードル

親族内承継は事業理念の継続や取引先の理解を得やすい反面、適任者がいない、経営に興味を持たないといった問題に直面することもあります。

一方で、従業員承継は社内事情に精通した後継者が育ちやすい利点がありますが、株式取得資金や経営責任の重さが壁になる場合もあります。

両者に共通するのは、事前準備と支援体制の整備が不可欠である点です。

M&Aで若手経営者や
人材を確保した成功事例

2020年代に入って以降、建設業界でもM&Aを通じた事業承継や人材確保が本格化しています。

北海道の舗装工事業者である道路建設会社は、経営基盤の拡大を図る中で、地域内の海洋土木関連業者である北興工業を譲り受けました。

両社は以前から業界関係での面識がありましたが、経営難に陥った北興工業の事業と人材を地域に残すべく、譲受けを決断しました。

M&A後は、前経営者が副社長として継続勤務し、社内文化を維持しながら若手経営者が経営刷新を主導。両社の技術や人材を融合させ、採用強化やDX推進、共同研修による相互成長を実現しています。

このように、地域経済や従業員を守る視点からのM&Aは、単なる事業拡大にとどまらず、後継者問題の解決と若手リーダーの登用という両立を可能にしています。

参照元:日本M&Aセンター公式HP(https://www.nihon-ma.co.jp/page/interview/douken/

地域内再編・グループ化による
持続可能な体制づくり

後継者不足が深刻化する中、地域単位での再編や同業種間のグループ化が進められています。

これは技術者や職人の流動性を高め、現場単位での人材シェアを可能にするだけでなく、業務の効率化経営の安定化にもつながります。

また、建設と不動産、設備業などとの異業種連携により、提案力やサービスの幅が広がり、新たな雇用や顧客の創出にも寄与。

とはいえ、再編や連携を進めるには、信頼できる外部パートナーの存在が不可欠です。地域に根ざし、再編支援や事業承継の実績を持つ専門機関やコンサルティング会社といったところに、まずは相談を検討してみましょう。

まとめ

建設業界の高齢化対策には、「人を育てる」「技術を継承する」「仕組みで守る」という三軸のアプローチが必要です。現場力を未来につなげるためには、デジタル化×教育×承継の複合戦略が不可欠です。今できる対策から着実に始めましょう。

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