M&AにおけるFAと仲介の違いについて

M&Aを検討する経営者にとって「誰に相談するか」は、取引条件そのものを左右するほど重要です。代表的な支援者には「FA(ファイナンシャル・アドバイザー)」と「仲介会社」があり、どちらを選ぶかによって交渉の方向性も成果も大きく変わります。本記事では、FAと仲介会社の違いを徹底的に比較し、建設業M&Aにおける最適な選択の指針を提示します。

M&Aにおける「FA(ファイナンシャル・アドバイザー)」とは

FAの基本的な役割

FAは依頼主専属で活動し、戦略立案から交渉、契約支援までを一貫して行います。語源のとおり「アドバイザー」でありながら、単なる助言者にとどまらず、交渉戦術を設計し、依頼主の利益を守る代理人のような存在です。

日本でFAが普及した背景には、2000年代以降の大型案件やクロスボーダーM&Aの増加があります。金融機関や大手証券会社が担い手となり、企業価値評価や交渉技術を駆使して依頼主を支援してきました。そのため、FAには「金融プロフェッショナルの知見を持つ専門家」というイメージが強くあります。

FAが行う典型的な業務は以下の通りです。

つまりFAは、M&Aを「単なる成約」ではなく「依頼主に最適な成果」に導く役割を果たします。

誰の立場で動くのか?

FAは必ず「売り手専属」または「買い手専属」で契約します。売り手FAは高値売却や好条件獲得を狙い、買い手FAは低価格・低リスクでの取得を目指します。双方にFAがついた場合、交渉は極めてシビアになり、長期化することも少なくありません。

建設業M&Aにおいて売り手FAが重視するのは「建設業許可・経審スコア・技術者体制」を評価額に反映させることです。買い手FAなら「赤字工事・人材の高齢化・未払い下請代金」などのリスク要因を強調し、条件調整を迫ります。このようにFAは立場を明確にし、徹底的に依頼主の利益を守ります。

報酬形態や契約形態

FAは一般的に以下の報酬体系です。

この仕組みは「案件が途中で流れてもFAの負担が偏らない」点で合理的ですが、中小企業にとってはコスト負担が重く感じられることもあります。それでも利益最大化を徹底してくれる安心感を得られるため、大型案件や条件が複雑な案件では選ばれることが多いです。

仲介会社(M&A仲介)とは?

仲介型のM&A支援の特徴

仲介会社は売り手と買い手の双方を担当し、合意形成を促進します。FAのように「一方の味方」ではなく、両者の着地点を探すことが役割です。日本の中小企業M&A市場では、件数の大半が仲介型で進められています。

背景には「小規模案件ではFAに依頼するコストが高すぎる」「スピード感が重要」という事情があります。仲介会社は「完全成功報酬」「着手金無料」のモデルも多く、中小企業が利用しやすいのが強みです。

売り手と買い手の間に立つ「中立型」サポート

仲介会社は双方の希望を調整し、短期間で合意に導きます。ただし「売り手は高く売りたい」「買い手は安く買いたい」という基本的な利害対立を抱えるため、完全な中立ではなく、利益相反の可能性は常に存在します。

例えば、売り手が「もっと高値で売れるのでは」と期待していても、仲介会社は「成約を優先して妥協を促す」場合があります。裏を返せば、スピーディな成約を望む経営者には向いています。

スキーム設計と進行支援の流れ

仲介会社が担うのは「全体の交通整理」です。以下の流れを一括で支援します。

このように仲介は「ワンストップで中小企業を支援できる」ことが最大の魅力です。

FAと仲介の違いを比較表で整理

FAと仲介の最大の違いは「誰の味方として動くか」と「利益相反の有無」です。以下の比較表に整理しました。

比較項目 FA(ファイナンシャル・アドバイザー) 仲介会社(M&A仲介)
支援のスタンス 依頼主の利益最大化を追求。交渉は強気。 双方の妥協点を探し、成約を最優先。
利益相反の有無 なし(売り手専属 or 買い手専属) あり得る(双方を担当するため)
情報の透明性 依頼主の利益基準で情報を精査・戦略的に開示 双方が納得できる形で情報を調整
報酬体系 リテイナー+成功報酬(レーマン方式) 成功報酬型中心。着手金無料も多い。
向いている案件 大型案件、海外案件、条件が複雑な取引 中小規模案件、地方案件、早期承継を希望する案件

最大の違いは「利益相反」の有無(片手取引と両手取引)

FAと仲介における最も根本的な違いは、 契約形態に起因する「利益相反」の有無です。 FAは依頼主(売り手、あるいは買い手)のどちらか一方のみと契約を結ぶ「片手取引」を行います。 そのため、依頼主の利益最大化を徹底的に追求することが可能です。

一方で、仲介は売り手・買い手双方と契約を結び、中立な立場で成約を目指す「両手取引」となります。 ここで問題となりやすいのが、 「売り手はできるだけ高く売りたいが、買い手はできるだけ安く買いたい」という利益相反です。 仲介会社は成約を最優先とするため、時には双方に妥協を促すケースもあり、 自社の利益が最大化されない可能性がある点には注意が必要です。

報酬体系の違いと手数料相場(レーマン方式)

M&Aの手数料計算においては、 取引金額に応じて一定の料率を掛ける「レーマン方式」が一般的です。 しかし、FAと仲介ではこの料率を掛ける基準となる金額が異なるケースが多く見られます。 仲介会社は企業価値に負債を含めた「総資産ベース」を採用することが多いのに対し、 FAは実際の株式譲渡対価である「譲渡金額ベース(純資産ベース)」を採用する傾向があります。 負債が多い企業の場合、総資産ベースでは手数料が割高になるため事前確認が不可欠です。

具体的な最低手数料の相場としては、 一般的な中小企業向けのM&A仲介会社であれば1,000万円〜2,000万円程度に設定されていることが多く、 コストを抑えた進行が可能です。 対して大手のFAに依頼する場合は数千万円〜が最低ラインとなることが多く、 高度な専門性と交渉力を得るための費用として捉える必要があります。

建設業M&Aではどちらを選ぶべきか?

地方建設会社や中小企業の場合

従業員数50名以下、売上数億円規模の建設会社では、仲介会社を選ぶケースが多いです。理由は、費用負担が軽く、短期間で候補を探せるからです。後継者不在で「1〜2年以内に承継したい」といったニーズには仲介のスピード感がマッチします。

特に建設業においては、建設業許可の確実な引き継ぎや、 現場を支える職人の雇用維持が最重要課題となることが多くあります。 このような事情から、シビアな条件交渉で時間をかけるよりも、 スピード感と成約率を重視して最適な引き継ぎ先を見つけてくれる仲介が選ばれやすい傾向にあります。

具体的な判断のボーダーラインとして、 売上5億円未満、または譲渡希望額が1億円〜3億円未満であれば費用対効果の面から「仲介」が適していると言えます。 一方で、売上10億円以上であり、自社の技術力や実績を武器に複数の買い手候補とシビアな条件交渉を行いたい場合は「FA」を選ぶのが賢明な判断となります。

規模・意向・関係性によって変わる最適パートナー

一方で、売上数十億円規模の会社や公共工事の比率が高い会社ではFAが適しています。FAは「経審スコア」「建設業許可の種類」「技術者体制」など、建設業特有の強みを正しく評価に反映させ、高条件での売却を可能にする交渉力を発揮します。また、大手ゼネコンや異業種大手が買い手の場合、FAの存在が安心材料になります。

専門家選びで失敗しないためのチェックリスト

FAでも仲介でも、最終的には「誰に依頼するか」が決定的です。以下のチェックリストで比較検討すると失敗を防げます。

まとめ

M&Aにおけるパートナー選びは、 最終的な「譲渡条件」や「成約スピード」に直結する非常に重要な決断です。 自社の利益を最大化し、少しでも有利な条件で譲渡したい場合は「FA」が適していますが、 売り手・買い手双方のバランスをとり、スピーディかつ円滑に成約まで導いてほしい場合は「仲介会社」が有効です。

特に建設業のM&Aにおいては、会社規模だけでなく 「公共工事の比率(経審スコア)」や「施工管理技士などの技術者体制」「建設業許可の確実な引き継ぎ」といった 業界特有の事情が、企業価値を大きく左右します。

これらの自社の強みをシビアに評価して強気の条件交渉を行いたいのか、 あるいは従業員の雇用維持や取引先の安心を第一に考え、早く最適な相手を見つけたいのか。 まずは自社が「M&Aで何を最優先したいのか」を整理し、 FAの専門性と仲介のスピード感、どちらが自社の目的に合致するかを検討することが成功の第一歩です。 迷った際は、建設業界の実情に明るい専門家に初期相談を行い、 自社に合った進め方を提案してもらうことをおすすめします。

相談したい相手が結果を変える!事業承継の相談先3選
信頼できる相談相手が
見つかる!
事業承継の相談先3選
相談先が結果を変える
建設業の事業承継の相談先3選

建設業の事業承継は誰に相談するかが重要な鍵を握ります。
企業の求める承継の形を実現してくれる相談先を目的別に紹介します。

業界の承継事情を熟知
した
専門家に相談できる
M&Aフォース
M&Aフォース
引用元:M&Aフォース(https://www.ma-force.co.jp/)
利用するメリット
  • M&A成約件数30件以上※1(2025年6月時点)、かつ建設業のM&A成約経験を持つベテランコンサルタントが必ずチームに参画
  • 事業の強みを把握し、シナジーを得られる企業に営業をかける受注販売のようなM&Aを採用。自社の良さを引き継ぐ同業での承継が実現しやすい
利用するデメリット
  • 少数精鋭で運営しているため、対応できる案件数には限りがある可能性が高い
料金
着手金なし完全成果報酬
   
M&A売上No.1
企業に相談できる
日本M&Aセンター
日本M&Aセンター
引用元:日本M&Aセンター(https://www.nihon-ma.co.jp/)
利用するメリット
         
  • M&A仲介業界で売上No.1※224年度は441億円を誇るM&Aセンター業界最大手※3
  • 数千社規模の買い手候補リストを持っており、別業種や国外の買い手など多彩な選択肢が得られる
利用するデメリット
         
  • 業界最多のコンサルタント人数716名※4(2025年3月末時点)のため、どのような経験を持つコンサルタントがつくのかがわからない
料金
着手金100万~+成果報酬

※相談やマッチング
機能利用は無料

承継先を自分で
探すことができる
しんきんトランビプラス
しんきんトランビプラス
引用元:しんきんトランビプラス(https://shinkin.tranbi.com/)
利用するメリット
         
  • 会員数20万人以上※5のM&Aマッチングサイトを活用し、自分自身で納得する相手を探すことができる
  • マッチング後のサポートは懇意にしている信用金庫を通すことができる安心感
利用するデメリット
  • 買い手が適正なのかどうかは自社での見極めもしくは相談先を別途確保する必要がある
料金
売り手は完全無料

※1参照元:M&Aフォース(https://www.ma-force.co.jp/consultant/
※2参照元:Career Ladder(https://careerladder.jp/blog/ranking/
※3参照元:日本M&Aセンター(https://recruit.nihon-ma.co.jp/about-us/data-overview/
※4参照元:日本M&Aセンター(https://www.nihon-ma.co.jp/groups/message.html
※日本M&Aセンター費用の参照元https://www.nihon-ma.co.jp/service/fee/convey.html
※5参照元:トランビ(https://www.tranbi.com/