建設業でM&Aによる事業承継を検討する際は、仲介手数料や諸経費の全体像を正しく把握することが欠かせません。建設業特有の受注状況や許認可の有無によって企業価値が変動し、その価値をベースに計算される仲介手数料も変わるためです。
本記事では、建設業の視点から手数料の仕組みや相場を詳しく解説し、適した仲介会社を選ぶポイントを解説します。
ここでは、手数料体系や成功報酬の相場、注意点を建設業の視点で解説します。
M&A仲介手数料は、サービス提供の対価として支払う重要なコストです。主に「レーマン方式」と「固定+成功報酬型」の2つに分類されます。
レーマン方式とは、譲渡価格に一定の料率を掛けて報酬額を算出する方式で、一般的には価格帯ごとに段階的なパーセンテージが設定されます。例えば、5億円以下の部分には5%、5億円超〜10億円までは4%といった具合です。
一方で、固定+成功報酬型では、初期の着手金や月額報酬を支払いながら、最終的な譲渡成立時に成功報酬を加算する形式が一般的です。この形式では、成約に至らなくても一定の費用負担が発生するため、初期コストを抑えたい企業は注意しましょう。
成功報酬の水準は、一般的に譲渡価格の3%〜5%程度が目安とされています。例えば、5億円の譲渡案件であれば、1,500万円〜2,500万円程度の成功報酬が発生する計算です。
料率は規模に応じて段階的に下がる「段階レーマン方式」が採用されることも多く、高額取引になるほど実質的な料率は下がる傾向にあります。
成功報酬以外にかかる費用として、着手金・中間金・月額報酬などがあります。これらの費用は仲介会社によって有無が異なるため、事前の確認が欠かせません。
着手金は契約時に発生する初期費用で、設定されている場合は50万〜200万円程度が相場です。無料とする会社もありますが、そのぶん成功報酬が高くなるケースもあります。
月額報酬はリテイナーフィーとも呼ばれ、30万〜200万円に設定されるのが一般的です。契約期間中の継続的な活動に対する費用として、毎月支払う形となります。なお、月額報酬を設けない完全成功報酬型を採用する仲介会社も見られます。
中間金は、基本合意書の締結時などに発生することがあり、金額は50万円~200万円前後が目安です。設定の有無は会社ごとに異なるため、報酬体系が明示されているかどうかを事前にチェックしましょう。
M&A仲介では「最低報酬制度」が設けられている場合があります。これは、取引金額が小規模であっても、一定額以上の成功報酬が保証される仕組みです。
例えば、譲渡価格が小さく通常のレーマン料率では200万円程度にしかならない場合でも、最低報酬として300万〜500万円を請求されるケースがあります。
小規模案件ではこの制度により、実質料率が高くなる点に注意が必要です。
M&Aにおけるデューデリジェンス(DD)は、譲受企業が安心して譲受できるよう、譲渡企業の実態を多角的に調査する重要な工程です。
特に建設業では許認可や人材、契約形態など多くの確認事項があるため、DDの範囲や費用について正しく把握しておくことが欠かせません。
DDには主に、税務・財務・法務・労務など複数の分野があります。建設業においては、契約内容や労働環境、安全管理体制なども重要な確認項目です。
一般的な費用相場は、1分野あたり50万〜150万円程度が目安となります。企業規模や調査範囲によって費用は大きく変動するため、事前の見積もりが重要です。
DDは対象分野ごとに専門性が異なり、建設業でよく実施されるのは以下のとおりです。
これらの費用は、各分野あたり50万〜150万円程度が一般的です。必要な分野だけを選んで依頼することで、費用の調整が可能です。
企業規模に関わらず、DDは基本的に必要とされます。省略すると、後から債務や契約上のリスクが発覚する恐れがあるためです。
ただし、全方位的な調査ではなく、リスクの高い分野に絞って実施するなど費用を抑える工夫ができます。事前に資料を整理しておくと、コスト削減につながります。
DDの実務には、税理士・弁護士・社労士といった専門家の関与が不可欠です。例えば財務DDには公認会計士や税理士、法務DDには弁護士、労務DDには社労士が担当します。
連携にかかる報酬は分野ごとに数十万〜数百万円かかる場合があり、トータルの費用に大きく影響します。事前に業務範囲と費用を明確にしておくことが肝要です。
M&Aにかかる費用は、仲介手数料やデューデリジェンス費用だけではありません。建設業ならではの法的手続きや契約関連のコストも見落とせない要素です。
ここでは、事前に把握しておきたい諸経費や準備段階で必要となる費用について解説します。
建設業のM&Aでは、譲渡後に許可の変更や更新手続きが必要になるケースがあります。
特に知事許可から大臣許可への切り替えや、経営管理責任者の変更など、法的な手続きが発生するため、行政書士などの専門家に依頼するのが一般的です。
費用は手続きの内容に応じて5万〜20万円程度が目安となります。
これらを確実に行うことで、事業承継後も許可の維持や公共工事・元請け契約に支障がなく、スムーズに営業を継続できる安心感を得られます。
M&Aを検討する初期段階では、事業価値の評価や譲渡後のシミュレーションを行うことがあります。これらは中立的なアドバイザーに依頼する場合が多く、費用は数十万円程度が相場です。
精度の高い評価は、売却価格や条件交渉において大きな武器となります。
M&Aでは、株式や事業の譲渡にともない、登記変更や税務処理といった法的手続きが発生します。これらにかかる費用を把握しておくことは、予算管理を適切に行い、予期せぬコストを避けるうえで重要です。
例えば、役員変更や本店移転などの登記変更では、法務局への登録免許税などで数万円の実費がかかります。また、契約書に必要な印紙税は契約金額に応じて1万〜10万円程度が必要となるケースがあります。
あらかじめこうしたコストを見積もっておくことで、交渉や契約手続きが円滑に進み、想定外の出費による混乱を防ぐことができます。
意外と見落とされがちなのが、各種契約の再手続きに関わる費用です。
事業譲渡後には、建設業者賠償責任保険や賃貸契約などの契約名義を変更する必要があり、再契約にあたって保証金や更新手数料が発生する場合もあります。
事前に影響範囲を確認し、費用を見積もっておくことが重要です。
M&Aの成否を左右する要素のひとつが、仲介会社の選定です。特に建設業においては、業界特有の事情を理解したうえで適切なサポートを提供できるかどうかが重要になります。
ここでは、費用対効果を最大限に引き出すための仲介会社選びのポイントを紹介します。
建設業では、許可や技術者の要件、人材流動性など業界特有の事情があります。そのため、過去に建設業のM&A支援実績がある仲介会社を選ぶようにすると、スムーズな承継が期待できます。
事例紹介や担当者の専門知識も確認しておきたいポイントです。
仲介会社との契約形態は、事前に明確にしておく必要があります。専任契約では他社との併用ができない代わりに集中的なサポートを受けられます。完全成功報酬型は初期費用を抑えたい場合に有効ですが、成功報酬が高めに設定されている場合もあるため、条件を比較することが大切です。
仲介会社の中には、報酬体系やサービス範囲が曖昧なまま契約を進めるケースもあります。提案段階で、サポート内容と費用の内訳を明示してくれる会社であれば、想定外のコストや業務抜けを防げます。
比較の際には、業務範囲を明文化しているかをチェックしましょう。
仲介会社によっては、現実的とは言い難い高額な売却価格を提示するケースがあります。期待値が上がりすぎると、成約が長引く原因になるため注意が必要です。
適切な評価根拠に基づき、売却価格と条件のバランスが取れているかを冷静に見極めましょう。
建設業のM&Aでは、仲介手数料やDD費用、法務・税務対応を含めると、数百万円から数千万円規模のコストが発生することもあります。
そのため、料金体系が明確であり、業界の実情に精通した仲介会社を選ぶことが、納得のいく承継の第一歩となります。
まずは複数の仲介会社に相談・見積もりを依頼し、自社に合った適切なパートナーを見つけてはいかがでしょうか。
建設業の事業承継は誰に相談するかが重要な鍵を握ります。
企業の求める承継の形を実現してくれる相談先を目的別に紹介します。


※相談やマッチング
機能利用は無料

※1参照元:M&Aフォース(https://www.ma-force.co.jp/consultant/)
※2参照元:Career Ladder(https://careerladder.jp/blog/ranking/)
※3参照元:日本M&Aセンター(https://recruit.nihon-ma.co.jp/about-us/data-overview/)
※4参照元:日本M&Aセンター(https://www.nihon-ma.co.jp/groups/message.html)
※日本M&Aセンター費用の参照元https://www.nihon-ma.co.jp/service/fee/convey.html
※5参照元:トランビ(https://www.tranbi.com/)