M&A仲介会社の報酬体系の中でも、最も一般的に使われているのが「レーマン方式」です。建設業のM&Aでも標準的に採用されており、売却金額に一定の料率を掛けて成功報酬を計算する仕組みになっています。ただし、名称だけが先行してしまい、具体的な計算のされ方や注意点を理解しないまま契約してしまうと、「思ったより報酬が高かった」という結果になりかねません。
この記事では、レーマン方式の意味や歴史的な背景から、具体的な計算例、仲介会社による報酬体系の違い、メリット・デメリット、そして建設業M&Aで押さえておきたいポイントまで、順を追って分かりやすく解説します。
レーマン方式とは、M&Aの成功報酬を「取引金額に応じたパーセンテージ」で算定する仕組みのことです。売却額が高くなれば報酬額も増えますが、金額の区分ごとに料率を変えることで、一定のバランスを保つように設計されています。多くの場合、取引金額が大きくなるほど料率は低くなる「逆進性」が採用されています。
たとえば、5億円まで5%、5億円超〜10億円までは4%といったように、段階ごとに異なる料率を設定しているケースが一般的です。「売却額 × 料率」で直感的にイメージしやすいため、売り手にとっても理解しやすい報酬体系といえます。
レーマン方式はもともと、アメリカの投資銀行が大型の証券取引やM&A案件で用いた報酬モデルが原型とされています。案件規模が大きくなるにつれて、一定の料率を維持すると報酬が過大になりやすいため、「金額が大きい部分ほど料率を下げる」という考え方が生まれました。
日本でも、バブル期以降にM&Aの活発化とともにこの考え方が導入され、現在では大手・中堅仲介会社の多くがレーマン方式をベースとした報酬体系を採用しています。特に、株式譲渡や事業譲渡など取引規模が読みにくい案件において、合理的かつ説明しやすいモデルとして定着しました。
建設業を含む中小企業M&Aでレーマン方式が広く使われる理由として、次のような点が挙げられます。
建設業は「数千万円〜数億円規模」の案件が多く、同じ業種でも会社によって規模が大きく異なります。そのため、一律の固定報酬よりも、取引金額に応じて変動するレーマン方式の方が実務に馴染みやすいのが実情です。
レーマン方式の大きな特徴は、「取引金額をいくつかの区分に分け、それぞれに異なる料率を適用する」点にあります。たとえば、以下のような区分を設定しているケースが代表例です。
建設業の中小企業M&Aでは、売却価格が1億〜数億円のゾーンに収まるケースが多く、この場合は主に「5億円以下の5%」という枠が適用されることが一般的です。
実務上、仲介会社によって細かな料率は異なりますが、中小企業を対象とするレーマン方式では、次のような料率がひとつの目安とされています。
建設会社の売却金額が1億円未満の場合、ほとんどのケースで5%前後の料率が適用されます。ただし、最低報酬額を「500万円」などと設定している仲介会社も多く、金額が小さい案件では、レーマン方式の結果より最低報酬額が優先されることもあります。
ここでは、売却価格3億円の建設会社を売却したケースを想定して、実際にレーマン方式で成功報酬を計算してみます。シンプルなイメージを持てるよう、5億円以下は一律5%と仮定します。
この場合の報酬額は以下のとおりです。
3億円 × 5% = 1,500万円
つまり、3億円の売却が成立した場合、仲介会社への成功報酬は1,500万円となります。これに加えて、契約内容によっては消費税や実費が別途必要となることもあります。
レーマン方式には、大きく分けて「総額方式」と「段階累進方式」の2パターンがあります。
たとえば、売却額6億円で「5億円まで5%、5億円超〜10億円まで4%」という設定の段階累進方式の場合、以下のように計算します。
一方で総額方式の場合、6億円に対して一律5%を掛けると「6億円×5%=3,000万円」となり、段階累進方式より高くなるケースもあれば逆のパターンもありえます。どちらの方式を採用しているかで報酬が変わるため、契約前に必ず確認しておきましょう。
多くの仲介会社は、レーマン方式に加えて「着手金」「中間金」など複数の費用を組み合わせた体系を採用しています。たとえば、次のようなイメージです。
このような体系では、契約段階から一定の費用負担が発生します。その一方で、仲介会社側もある程度の責任とリソースを投下しやすくなるという側面があり、手厚い支援を売りにしている会社に採用されやすい傾向があります。
建設業の中小オーナーにとって人気が高いのは、着手金や月額報酬がなく、「成約したときだけレーマン方式の成功報酬を支払う」完全成功報酬型です。売却が成立しなければ支払う必要がないため、資金負担を抑えながら相談しやすいのがメリットです。
ただし、完全成功報酬型の場合でも、最低報酬額や実費が別途かかることがあります。「相談は無料だが、成約時は最低500万円から」などの条項が盛り込まれているケースもあるため、書面でしっかり確認しましょう。
レーマン方式の成功報酬とは別に、以下のような費用が別途発生する場合もあります。
これらが「成功報酬に含まれるのか」「別途請求なのか」は仲介会社によって異なります。見積書や契約書の内訳を細かく確認し、総額でいくら必要になるのかを事前に把握しておくことが重要です。
レーマン方式のメリットとして、まず挙げられるのが「成果に応じた報酬設計で納得感を得やすい」点です。売却額が高くなれば、それだけ企業価値が評価された結果であり、その一部を仲介会社に支払うという形は、双方にとっても受け入れやすい考え方です。
また、取引金額に応じて料率が下がるため、極端に高額な手数料になるのを防ぎやすい点もメリットです。建設会社では、売上・利益の規模が案件ごとに違うため、ケースに応じたバランスの良い報酬設定がしやすくなります。
一方で、デメリットもあります。特に注意したいのが「規模が大きいほど報酬総額も高額になる」点です。売却額が数億円になると、手数料も数千万円単位となり、オーナーが手取り額を見たときに想像以上の負担に感じることがあります。
また、総額方式なのか段階累進方式なのか、最低報酬額がいくらなのかといった条件によって、実際の負担感は大きく変わります。料率だけを見て判断すると、結果的に他社より割高になることもあるため、総額で比較することが大切です。
レーマン方式はシンプルに見えますが、実際には売却金額が成約まで確定しないため、「最終的にいくら支払うことになるか」が契約時点では読みづらいという側面があります。
特に建設業のM&Aでは、保有している許可、技術者、案件のストック状況などによって評価が変動しやすく、想定より高い評価がつけば、その分だけ成功報酬も増えることになります。嬉しい悩みではありますが、資金計画を立てる際は、複数のパターンで概算試算をしておくと安心です。
売却額が1億円未満の小規模な建設会社の場合、多くの仲介会社は「5%前後の料率+最低報酬額」という形を採用しています。たとえば、売却額8,000万円で料率5%の場合、計算上は400万円となりますが、最低報酬が500万円に設定されている場合は500万円が適用されるといったイメージです。
小規模案件ほど最低報酬の影響が大きくなるため、「売却額がいくらならどのくらいの報酬になるのか」を事前にシミュレーションしておくことが重要です。
建設業M&Aでは、単純な売上や利益だけでなく、以下のような要素が企業価値に大きく影響します。
これらがしっかり評価されることで売却額が高くなれば、その分レーマン方式の成功報酬も増加します。「何が評価されて売却額が決まるのか」を理解しておくと、報酬額にも納得感を持ちやすくなります。
建設業のオーナーがレーマン方式を利用する際に、特に確認しておきたいポイントは次のとおりです。
これらを契約前に確認し、複数の仲介会社から見積もりを取得して比較することが、高額な報酬を避けるうえで有効です。また、建設業に詳しい専門家や顧問税理士などに契約書の内容をチェックしてもらうと、より安心して進めることができます。
レーマン方式は、M&A業界で広く使われている成功報酬の算定方法であり、建設業のM&Aでも標準的なモデルとなっています。売却金額に応じて費用が決まるため、成果と報酬のバランスが取りやすい一方で、総額方式か段階累進方式か、最低報酬や実費の扱いなどによって、最終的な支払額は大きく変わります。
特に中小建設業者にとっては、想定外の支出を避けるためにも、契約前に報酬体系を細かく確認し、自社の場合はいくらになりそうかをシミュレーションしておくことが欠かせません。疑問がある場合は、建設業に明るい専門家へ相談しながら、納得できる条件でM&Aを進めていくことが重要です。
建設業の事業承継は誰に相談するかが重要な鍵を握ります。
企業の求める承継の形を実現してくれる相談先を目的別に紹介します。


※相談やマッチング
機能利用は無料

※1参照元:M&Aフォース(https://www.ma-force.co.jp/consultant/)
※2参照元:Career Ladder(https://careerladder.jp/blog/ranking/)
※3参照元:日本M&Aセンター(https://recruit.nihon-ma.co.jp/about-us/data-overview/)
※4参照元:日本M&Aセンター(https://www.nihon-ma.co.jp/groups/message.html)
※日本M&Aセンター費用の参照元https://www.nihon-ma.co.jp/service/fee/convey.html
※5参照元:トランビ(https://www.tranbi.com/)