建設業の事業承継には、税金や手続き、専門家報酬などの費用に加え、許認可や設備の引継ぎといった建築工事業特有のコストも発生します。
本記事では承継方法別の費用相場や補助金制度について、分かりやすく解説します。
建設業で事業承継を行う際には、税金・専門家報酬・名義変更・契約対応など、さまざまな費用が発生します。特に建設業許可や重機設備といった実務面での対応が必要となり、一般的な中小企業とは異なる準備が求められる点も特徴です。
また、承継の方法によっても費用の構造は大きく変わります。親族内承継・従業員承継・第三者承継(M&A)などの選択肢により、必要な支出は数十万円から数千万円規模まで幅があります。
建設業における事業承継費用の全体像を把握しておくことで、自社に適した手段を選びやすくなり、円滑な引継ぎにもつながるでしょう。
事業承継にかかる費用は、親族内・従業員・M&Aといった方法ごとに大きく異なります。それぞれに特有のコスト構造とともに、費用に見合うメリットがあります。自社の状況に合わせて、適切な承継方法を選ぶ参考にしてください。
親族間での承継では、相続税や贈与税への対応が主な課題となります。例えば相続税対策を税理士に依頼する場合、数十万〜数百万円の報酬が想定されます。
株式評価が高額な場合は、納税資金の確保や遺留分トラブルを防ぐための法務コスト(弁護士費用など)も発生。
ただし、親族内承継は会社の理念や創業者の意志を継ぎやすく、税制優遇措置(事業承継税制)を活用すれば税負担を大きく軽減できる可能性があります。資産と経営を親族内でまとめたい企業にとっては、長期的な安定性も大きな利点です。
役員や幹部社員による承継(MBO)では、株式取得資金の調達が最大の課題となります。金融機関から融資を受ける場合、保証料や手数料として数十万円がかかることも。
また、契約書の整備やスキーム構築を専門家に依頼する場合、弁護士・税理士等への報酬として30万〜100万円程度が必要になるのが一般的です。
その一方で、従業員承継は既に業務を理解している人材による引継ぎとなるため、社内ノウハウの維持や従業員の安心感につながりやすいメリットがあります。外部への情報漏洩リスクが低く、事業の一体感を保ったまま移行できる点も魅力です。
第三者承継としてM&Aを選ぶ場合、費用の中心となるのが仲介会社への成功報酬です。相場としては譲渡金額の3%〜5%前後が一般的で、多くのケースで最低報酬額が500万円〜2,500万円の範囲で設定されています。※1
これに加え、買い手側による財務・法務・税務のデューデリジェンスが実施されるのが通例で、財務・法務でそれぞれ100万円以上、税務では60万〜120万円程度の費用がかかるケースが多く見られます。※2
また、契約書の作成や確認にあたっては弁護士費用も発生し、100万〜200万円程度を見込んでおくと安心です。※3
こうした諸費用は決して安くはありませんが、適切な買い手に譲渡することで、会社の価値を正当に評価してもらえる点は大きな魅力です。従業員の雇用維持や既存取引の継続といった配慮もなされやすく、後継者不在の企業にとっては現実的で前向きな選択肢といえるでしょう。
建設業のM&Aでは、仲介手数料の比重が特に大きくなります。成功報酬型が一般的ですが、最低金額の設定やサポート体制の差もあるため、複数社を比較して選ぶことが重要です。詳細は以下の記事で詳しく解説しています。
建設業の承継で膨らみがちな税負担を軽減するため、事業承継税制(特例/一般)や納税猶予の仕組み、補助金活用、株式評価対策を建設業目線で整理。税理士と連携し早期対策を促す内容です。
建設業の事業承継では、他業種にはない許認可や設備管理の制度が関わるため、特有の追加コストが発生します。以下では、承継時に特に注意が必要な代表的な費用項目についてご紹介します。
建設業許可を維持するには、経営業務の管理責任者や専任技術者が要件を満たしている必要があります。承継により役員や技術者が変更になる場合は、建設業許可変更届の提出が必要です。
行政書士に依頼する場合、報酬額は変更内容や地域によって異なりますが、一般的には以下のような相場となっています。
これらの費用は、行政書士事務所の料金表に基づいており、具体的な金額は依頼内容や地域によって異なる場合があります。詳細については、各行政書士事務所の公式ウェブサイトをご確認ください。
事業承継後、経営業務管理責任者や専任技術者が退任・退職すると、建設業許可の要件を満たせなくなる可能性があります。例えば、経営業務管理責任者が不在になったり、専任技術者の実務経験が不足していたりするケースも。
このような場合、要件を満たす人材の再配置や外部からの採用が必要となります。人材紹介会社を利用して専任技術者を採用する場合、紹介手数料が発生。具体的な金額は、紹介会社や人材の経験・資格によって異なります。
必要な人材が確保できなければ、建設業許可の更新ができず、営業活動が停止するリスクも。したがって、数年先を見据えた人員配置計画を立て、早めの対応が求められます。
紹介手数料の金額については、紹介会社や人材の条件によって異なるため、各紹介会社に事前に確認が必要です。
建設業において、重機や設備は日々の工事を支える重要な資産です。事業承継時には、これらの所有権やリース契約の名義変更が必要となります。
例えば、代表取締役の変更に伴い、リース契約の名義を変更する場合、登記簿の代表名義を変更し、リース会社に申請を行い、審査を経て名義変更が可能です。
また、商号変更登記を司法書士に依頼する際の報酬額は、2〜3万円程度が一般的です。
リース契約の再交渉では、契約条件の変更が生じた場合、リースの契約条件の変更に関する会計処理が必要となることがあります。
これらの手続きは、名義変更だけでなく、契約内容の見直しや再審査が必要となる場合があります。遅れが生じると、工期の遅延や信頼の損失につながる可能性があるため、事前にリース会社や関係者との調整を進めておくことが重要です。
建設業では、契約保証や前払金保証など、保証協会との契約が公共工事の受注に欠かせない要件となっています。日常業務ではあまり意識されないかもしれませんが、承継を機に契約主体が変わる場合、保証契約も見直しが必要になることがあります。
例えば契約保証の場合、契約金額1,575万円に対する保証料は98,100円(※税込か税抜か不明)と試算されています(料率0.68%、差引額9,000円)※1。同様に、前払金保証では保証金額5,460万円に対し、175,240円(※税込か税抜か不明)の保証料が発生する例もあります。※2
これらの保証料に加えて、審査手数料が必要になることもあり、再契約時の費用が発生するケースも見受けられます(※契約金額や条件により変動)。
特に公共工事を請け負う企業にとって、保証の更新がなければ入札資格そのものを失うおそれがあります。事業承継の手続きが完了していても、保証の見直しを忘れていたために受注が止まってしまう事例は少なくありません。承継の準備段階から保証制度の確認・更新もあわせて進めておくことが重要です。
事業承継は「決意」だけでは進められません。専門家への相談や登記変更、必要に応じて設備投資も発生するなど、意外と費用がかかります。
ただ、こうしたコストはすべて自費でまかなう必要はありません。うまく使えば数百万円の支援を受けられる補助金や、相談無料の支援制度もあります。
ここでは、建設業の承継でも活用しやすい制度を、使うとどう助かるのかという視点でご紹介します。
中小企業庁が実施する「事業承継・引継ぎ補助金」は、専門家費用や設備投資、販路開拓費を最大2/3補助し、自社資金の負担を大幅に軽減しつつ承継プロセスを円滑に推進できる制度です。
補助上限は600万円で、後継者不在企業や第三者承継を検討中の企業にとって活用しやすい仕組みとなっています。申請には公募期間があるため、あらかじめ承継計画や経営革新の取り組みを整理したうえでの申請準備を行いましょう。
多くの自治体は独自の事業承継支援補助金を設けており、対象費用の一部をカバーすることで資金効率を高められます。
例えば、東京都の「事業承継支援事業」では、専門家への相談費用やアドバイス料を上限200万円まで補助し、専門家活用のハードルを下げています。
地方銀行や信用金庫は承継専門チームを設置し、事業評価、M&A仲介、資金調達支援をワンストップで提供するため、コストと手間を抑えた対応が可能です。
これらを組み合わせることで、自社資金を節約しながら効率的に承継準備を進められます。
事業承継ネットワークや各地の商工会議所では、税理士・行政書士・中小企業診断士などによる無料相談やマッチング支援を行っています。
特に、初期段階での「誰に・どう承継すべきか」の戦略立案や、資金・税務・許認可に関する実務相談に役立ちます。
専門家の支援は、多くの場合で公的機関が費用を負担するため、気軽に相談を始めやすい環境が整っています。
建設業の事業承継は誰に相談するかが重要な鍵を握ります。
企業の求める承継の形を実現してくれる相談先を目的別に紹介します。


※相談やマッチング
機能利用は無料

※1参照元:M&Aフォース(https://www.ma-force.co.jp/consultant/)
※2参照元:Career Ladder(https://careerladder.jp/blog/ranking/)
※3参照元:日本M&Aセンター(https://recruit.nihon-ma.co.jp/about-us/data-overview/)
※4参照元:日本M&Aセンター(https://www.nihon-ma.co.jp/groups/message.html)
※日本M&Aセンター費用の参照元https://www.nihon-ma.co.jp/service/fee/convey.html
※5参照元:トランビ(https://www.tranbi.com/)